We're Not Gonna Take It


Words & Music by PeteTownshend.
(1969年発表)





(原題直訳 「わたしたちはそんなことは御免だ」)





From The Who album, "Tommy".
名作アルバム度 ☆☆☆☆


「トミー」 (フー)





歌詞は、次のURLから
http://www.lyricsdepot.com/the-who/were-not-gonna-take-it.html




名曲度 ☆☆☆




邦題 「俺達はしないよ」







Tommy:
トミー:


Welcome to the Camp,
このキャンプにようこそ
I guess you all know why we're here.
みなさんは
なぜ、ぼくらがここにいるのか
よくおわかりのことと思います
My name is Tommy
ぼくの名前はトミー
And I became aware this year
そうです、ことしになって
目覚めることになった者です




If you want to follow me,
あなたがたが、もし
ぼくのあとにつづきたいのであれば
You've got to play pinball.
みなさんも
ピンボールをやらなくてはなりません
And put in your earplugs
そうです、その耳栓をして
Put on your eyeshades
目隠しをつけてください
You know where to put the cork
そのコルクはどこにつけるかおわかりですね




Hey you getting drunk, so sorry!
ほら、そこのあなたッ、酒を飲んでますね
たいへん申し訳ありません(が没収です)!
I've got you sussed.
ぼくにはわかりますよ
Hey you smoking Mother Nature!
そこのきみッ
母なる自然の恵み*1を喫ってますね!
This is a bust!
これも禁じられています!
Hey hung up old Mr. Normal,
はい、そこの落ち着きのない「まとも」さん
Don't try to gain my trust!
ぼくの信頼を得ようなんてしなくていいんですよ!
'Cause you ain't gonna follow me any of those ways
そんなやり方をしたって、わたしについてくることにはなりませんよ
Although you think you must
あなたが
どんなにそうしようと考えたとしてもです




Guests:
宿泊客たち:


We're not gonna take it
わたしたちは言うとおりにはしませんよ
We're not gonna take it
わたしたちは言いなりにはなりません
We're not gonna take it
そんなことは、おれたちは御免こうむるね
We're not gonna take it
おれたちは、そんなのは
受け容れやしねえぜ




We're not gonna take it
おれたちはそんなことするものか
Never did and never will
そんなの、したこともないし
するつもりもない
We're not gonna take it
そんなの、おれたちは御免だね
Gonna break it, gonna shake it,
叩き壊しちまえ
こんなの引っくり返してしまうんだ
Let's forget it better still
もうこんなのはどうでもいい
こうしたほうがずっとましだ




Tommy:
トミー:


Now you can't hear me,
さあ、これでみなさんも
ぼくの声が聞こえなくなりした
Your ears are truly sealed.
みなさんの耳はすっかり塞がれています
You can't speak either,
喋ることもできません
Your mouth is filled.
口が塞がれているのです
You can't see nothing,
みなさん、何も見えなくなりましたね
And pinball completes the scene.
あとはピンボールをすれば、それで完璧です
Here comes Uncle Ernie to guide you to
さあ、アーニー伯父さんが来ましたので
みなさんをご案内して
Your very own machine.
各自のマシンにお連れします




Guests:
宿泊客たち:


We're not gonna take it
おれたちはそんなの御免だね
We're not gonna take it
そんなこと
わたしたちはしないよ
We're not gonna take it
おれたちゃ、そんなことはイヤだよ
We're not gonna take it
そんなこと、おれたちがするものか




We're not gonna take it
わたしたちはそんなことはしませんよ
Never did and never will
したこともないし、
これからもする気もない
Don't want no religion
宗教なんか求めてるわけじゃないんだ
And as far as we can tell
言いたいことを言わせてもらうなら
We ain't gonna take you
おれたちは
おまえの言うことなんか聞きゃしないということだ
Never did and never will
あとにもさきにも、そんな気はないよ
We're not gonna take you
わたしたちは
あなたのことなどもういらないのです
We forsake you
おまえなんか、おれたちはもうお見限りさ
Gonna rape you
おまえなんか、メチャクチャにしてやるぜ
Let's forget you better still.
さあ、おまえのことなんかもう知ったことじゃないんだ
こうしてやるのがいいだろう




Tommy:
トミー:


See me.
ぼくを見てくれ
Feel me.
ぼくを感じてくれ
Touch me.
ぼくに触れてくれ
Heal me.
ぼくを癒してくれ




Listening to you,
あなたたちに耳を傾けて
I get the music.
ぼくは音楽を得ているんだ
Gazing at you,
あなたたちを見つめて
I get the heat.
ぼくは熱気を得ている
Following you,
あなたたちのあとを追って
I climb the mountains.
ぼくは山を登り
I get excitement at your feet.
あなたたちの足許でぼくは高まりを得るのだ




Right behind you,
あなたがたのすぐうしろに
I see the millions.
ぼくは無数の人々を見ている
On you,
あなたがたの上に
I see the glory.
ぼくは栄光を見ている
From you,
あなたがたから
I get opinions.
ぼくはオピニオンを得るのだ
From you,
あなたがたから
I get the story.
ぼくはストーリーを手にするのです




Listening to you,
あなたがたに耳を傾け
I get the music.
ぼくは音楽を得ている
Gazing at you,
あなたがたを見つめて
I get the heat.
ぼくは熱気を覚えてる
Following you,
あなたがたのあとを追って
I climb the mountains.
ぼくは山に登るのだ
I get excitement at your feet.
あなたがたの足許に
ぼくは心の高ぶりを覚えるのだ




Right behind you,
あなたがたのすぐ向こうに
I see the millions.
ぼくはたくさんの人たちを見ています
On you,
あなたがたの上に
I see the glory.
ぼくは栄光を見ています
From you,
あなたがたから
I get opinions.
ぼくは考えを得ています
From you,
あなたがたから
I get the story.
ぼくは物語を得るのです







Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






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耳栓をして、目隠しをして、口にコルクをはめて、
見えない、聞こえない、喋れないの三重苦の状態となって、
そして、ピンボールをする。
それが(どうやら)トミーのこの教団における最大の「行」であるようだ。


酒も大麻も(おそらくは煙草も)余計なへつらいやお喋りも、この教団では「修=行」の妨げとなるのだろう、
トミーのホリデーキャンプを訪れた人たちは、トミーたちの指示にしたがうように求められる。
しかし、(教団の肥大化にともない)次第にそこに齟齬が生じ、それが見え隠れし、
ついには無視できないほどの大きな亀裂となって表面化し、事態は収拾しがたいものとなっていったようだ。
信者たちから一斉に不満の声が上がり、指図や戒律への不服従が起こり
ついには(どうやら)その一部が暴徒化して、(破壊行為の末に)トミーは放逐されてしまう。*2



もはや、人々はトミーのピンボールのスーパープレーに心打たれて寄り集まって来た人たちばかりではなくなっていたのだ。


それがこの物語の(曖昧模糊とした)終わりである。

オペラが終わる・・・・・・




See me.
Feel me.
Touch me.
Heal me.

ぼくを見てくれ
ぼくを感じてくれ
ぼくに触れてくれ
ぼくを癒してくれ




おそらくは、救われていたのは、トミーや教団の人々の側だったのだろう。

彼がそれに気づいたかどうかはわからない。



いまやロック史上の伝説となっている1969年のウッドストック・ロック・フェスティヴァルに出演し、
深夜のステージで「トミー」を演奏したフー、
ちょうどロジャー・ダルトリーがこの最後のくだりを熱唱するところで
地平線が白々と明るくなってくるのがドキュメンタリー・フィルムの映像として残されている。

オペラの終わり・・・・、




Listening to you,
きみたちに耳を傾け
I get the music.
ぼくは音楽をものにする
Gazing at you,
きみらを見つめて
I get the heat.
ぼくは熱気を得る
Following you,
きみらのあとを追って
I climb the mountains.
ぼくは山を登る
I get excitement at your feet.
きみらの足許で
ぼくは心の高ぶりを覚えるんだ




こうして物語は終わるが、フーの演奏はまだ終わらない・・・
観客をまえにして、観客に向けて、歌い、演奏するザ・フーThe Who
観客をまえに発する「you」という単語は自ずと複数形で(あなたがた)と増殖していくことだろう。




Right behind you,
きみたちのすぐうしろに
I see the millions.
ぼくは無数の人間を見てるんだ
On you,
きみらの上に
I see the glory.
ぼくは栄光を目にしている
From you,
きみたちから
I get opinions.
ぼくは所信を得る
From you,
きみたちから
I get the story.
ぼくは物語を得ているのだ




・・・・・と、
おそらく、ステージの上で多くの観客をまえに初めてこう歌ったその瞬間に何か彼らには思いもしなった世界が開けたことだろうとわたしは想像してしまう。
オペラという物語がフェイドアウトし、生身のザ・フーのパフォーマティヴな演奏がよりいっそう力強くステージに現=在し、躍動する。
(のちの彼らの作品に歌われているように)
Long Live Rock! Be Dead or Alive.といったところだろうか。



以上、1969年発表のオリジナル・コンセプトによるロック・オペラ「トミー」を都合16回にわたって、拙いわたくしの演出でみなさんとご一緒に聴いてきましたが、いかがでしたでしょうか?


フーの「トミー」には、このオリジナル・アルバムの他に1972年発表のデイヴィッド・ミーシャム指揮のロンドン交響楽団とロンドン室内合唱団によるロジャー・ダルトリー(トミー)、スティーヴ・ウィンウッド(父親)、マギー・ベル(母親)、ロッド・スチュワート(ピンボール・チャンピオン)らのオール・ロック・スター・キャストをフィーチャーした「Tommy - As Performed by the London Symphony Orchestra & Chamber Choir」があり、さらには1975年のケン・ラッセルの映画版「トミー」のサウンドトラック・アルバム「Tommy」、1992年のブロードウェー・ミュージカル版のステージ・オリジナル・キャスト版の「The Who's Tommy: Original Cast Recording」などいくつかのバージョンがあり、それぞれがオリジナル・アルバムとは楽曲構成(曲順)や曲数も異なり、歌詞の細かな改変もあるなど、順を追ってこれを補うつもりでいたが、目下のところ、w.w.w. 上には、オリジナル版の歌詞のみしか見当たらないこともあって、今回はその作業はとりあえず見送りとする。
また、昨日づけのエントリーに対して、id:to-shima2 さんより嬉しいトラックバックをいただいたが、( http://d.hatena.ne.jp/to-shima2/20060115 )その記事の中で to-shima2 さんも述べているとおり、1996年になって大幅に増補改訂されて発表されたフーの1970年当時のライヴ・ステージを収録したアルバム「Live At Leeds - Delux Edition」には、Disk.2 をまるまる使って「トミー」のほぼ全曲近い20曲のタイトなライヴ演奏が記録されている。
わたしのこのページのクレジットでもオリジナル版のアルバムの "名作アルバム度" が(これだけの歴史的名作でありながら)(☆5つでなく)☆☆☆☆と4つにとどまってしまっているのは、ひとえにオリジナル・アルバムの「録音作品」としての質の貧弱さ、すなわち音としての物足りなさによる。*3
当時の「トミー」のライヴ演奏を収録したものには、他に「Live at the Isle of Wight Festival 1970」があって、そちらではよりエネルギッシュでのびのびした堂々たる「トミー」を聴くことができる。






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【A Year Ago−Go!】

(1年前のエントリーを Playback♪)



・「ライフ・ゴーズ・オン」 (キンクス


http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050105

*1:乾燥させた大麻草のこと。

*2:ケン・ラッセルの映画では母親も義父も暴徒と化した信者たちに惨殺されてしまう。

*3:「トミー」制作時のフーは、まだ(相撲で言えば)ようやく関脇になろうかというクラスのバンドで、この「トミー」の成功によって彼らが大関から横綱へと大躍進を遂げてスーパースターの域に達することになるわけだが、その時分はまだそれほど経営もうまくいっていたわけではなく、当時のフー・クラスのグループとしては破格と言える制作費をこの「トミー」という野心作に注ぎ込むことにはなったものの、当然、この意欲作には従来とは異なる長時間にわたるスタジオ使用が余儀なくされることがあらかじめわかっていたこともあったせいか、彼らは節約の意味からこれまでどおり当時でもロンドンでは二流とされていたIBCというスタジオを使ってレコーディングしたこともその(音的な貧弱さの)大きな理由として考えられるだろう。また、キット・ラムバートというグループのよき理解者であり助言者でもあるが、音的には実質的には素人でしかない彼のプロデューサーとの限界もあったと見てよいだろう。加えて、アルバムの完成は遅れに遅れ、ピートは最後の詰めの段階まで立ち会うことができずにアメリカ・ツアーに出発しなくてはならなかったことなど、いくつかこのアルバムにまつわる伝記的な事実が挙げられよう。