Comfortably Numb

Words & Music by David Gilmour and Roger Waters.
(1979年発表)



(原題直訳 「心地よく麻痺して」)




From The Pink Floyd album, "The Wall".
名作アルバム度 ☆☆☆

ザ・ウォール」 (ピンク・フロイド





歌詞は、次のURLから
http://www.pink-floyd-lyrics.com/html/comfortably-numb-wall-lyrics.html




名曲度 ☆☆


邦題 「コンフォタブリー・ナム」 (ピンク・フロイド









Hello?
ハロー?
Is there anybody in there?
意識はあるかい? *1
Just nod if you can hear me.
聞こえてるんだったら、頷いてくれればいいよ
Is there anyone at home?
わかるかい、意識はあるかい?
Come on, now,
さあ、どうした
I hear you're feeling down.
きみが気が弱ってるって聞いたもんでな
Well I can ease your pain
そうだなあ、わたしならきみの苦しみをなくして
Get you on your feet again.
もう一度
きみが自分の脚で立てるようにしてあげられるよ
Relax.
リラックスしろよ
I'll need some information first.
まず最初にいくらか知っとく必要があるんだが
Just the basic facts.
ほんの基本的な事実でいいんだ
Can you show me where it hurts?
どこが痛むのか教えてくれないかい?




There is no pain *2
痛みなんかはないんだ
You are receding
あなたが遠のいていく
A distant ship, smoke on the horizon.
遠くの船、水平線上の煙
You are only coming through in waves.
ひたすら波間を縫ってやって来るあなた
Your lips move but I can't hear what you're saying.
その唇は動いているけど
ぼくにはあなたが何と言ってるのか聞こえない
When I was a child I had a fever
子供の頃にぼくは熱病を患った
My hands felt just like two balloons.
両手がはまるで2つの風船玉みたいな感じになった*3
Now I've got that feeling once again
いま、またあの感じがぶり返している
I can't explain you would not understand
ぼくには説明できない、あなたにはわからないだろう
This is not how I am.
ぼくはこんなんじゃない
I have become comfortably numb.
ぼくは心地よく麻痺してしまっている




I have become comfortably numb.
ぼくは心地よく麻痺してしまっているんだ




O.K.
オーケー
Just a little pinprick.
ちょっと軽く注射をしとうこうかな
There'll be no more aaaaaaaaah!
もうこれ以上苦しくなることはないだろう。ギャーーッ!(悲鳴)
But you may feel a little sick.
だけど、
ちょっと気分が悪くなることはあるかもしれない
Can you stand up?
立ち上がれるかい?
I do believe it's working, good.
ちゃんと効いていると思うよ、よろしい
That'll keep you going through the show
これなら、はじめから終わりまで舞台が務まるさ
Come on it's time to go.
さあ、そこそろ時間だ、行こうぜ




There is no pain
痛みなんかないんだ
You are receding 
あなたが遠のいていく
A distant ship,
彼方の船
Smoke on the horizon.
水平線上の煙
You are only coming through in waves.
あなたはひたすら波間を縫ってやって来る
Your lips move but I can't hear what you're saying.
あなたの唇は動いているが
ぼくにはあなたが言ってることが聞こえない
When I was a child
子供の頃にぼくは
I caught a fleeting glimpse
束の間、垣間見たことがある
Out of the corner of my eye.
視界の片隅のさらに外へと
I turned to look but it was gone
そちらを向くと、もうなくなってしまっていた
I cannot put my finger on it now
いまじゃはっきり何だったのか覚えていない
The child is grown,
子供は大きくなったのだ
The dream is gone.
夢は消えてしまったのだ
I have become comfortably numb.
ぼくは心地よく鈍化してしまっている






Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞







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タイトルの「心地よく麻痺して」Comfortably Numb は、この物語のコンテクストを離れて言うなら、ある意味、この世の中に順応なり適応して生きていられる、そんな状態を指すものでもあるだろう。



I have become comfortably numb.
ぼくは心地よく鈍化してしまっている



いわゆる(大人になれない人間が妄想なり空想する)「大人になる」というのが、ある種の(感情や感性の)麻痺や鈍化と引き換えにもたらされるものだというステロタイプな発想があるが、一面的には(確かに)それは真実ではあるだろう。(だが、真実とはつねに高次の多面体をなしているのだととりあえず訳知り顔で言っておこうかwink)。


この歌は、アルバム2曲目の「薄氷」The Thin Ice に対応した歌となっている。あらためて聴き返してみるとよいだろう。

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050813#p2


結局、彼は(成功したロック・ミュージシャンというそのスケーティングの)その苦痛に耐えらなかったのだ。 *4


そして、彼は注射を打たれ、無理矢理ステージに引き出されようとされる。

*1:直訳すれば「そこに誰かいるのかい?」となるが、これは失神してる人間に向かって医者が問いただす常套句。

*2:このBメロを歌っているのはデイヴィッド・ギルモア。

*3:この曲のまえのまえの曲「「ノウバディ・ホーム」に「Got those swollen hand blues.」(あの腫れ上がった手の浮かない気分がしてるんだ)という一節があり、その部分との対応で何かそうしたトラウマめいた記憶を示唆しているように聴こえなくもない。

*4:この曲など、(フィクションではなく)実際のピンクフロイドのある時期の挿話と重なるものを連想させる。いうまでもなく(彼らの初期のフロントマンである)シド・バレットをめぐる挿話をだ。グループの人気が高まり、アメリカ・ツアーのさいちゅうあたりから、以前からの過度なアシッド・トリップの影響か、シドはステージの上でも外でも(グループの他のメンバーにとって)一緒にやっていくのが不可能に近い人間になっていく。それでも(当時は)(本人たちも周囲も)シドなしのピンクフロイドなどありえないと考えていたこともあって、とにかく我慢し、いやがる彼を励ましてステージにあげるなどしていたが、それでも次第に互いにうんざりするような思いが強くなっていく。そして、あるとき、ロンドンのサタデー・クラブのステージに現れたシドは、ただだらんと手が下がっただけの状態でとてもふつうのギター・ストロークさえできないような、そんな心身のコンディションだった。そんなことがつづき、彼らは(たとえステージにいるのが4人であったとしても)実質的に3人で演奏するようになる。そのシド抜きの演奏に自信を持った彼らは新たなギタリストとしてデイヴ・ギルモアを招き、しばらくは(面子としては)5人編成のピンクフロイド時代が短期間つづく。そして、あるとき彼は(ロンドンのノッティングヒルゲートに近いラドブローク・グローブで)決定的なミーティングを開く。そのとき他のメンバーがシドに伝えた決定の要旨は、1)今後もシド・バレットピンクフロイドのメンバーであり、ギャラもきちんと分配される。2)ただし、今後、いっさい(シドが)ピンクフロイドのメンバーとしてステージに上がることはもはやありえないこと。3)そのときロジャー・ウォータズの頭の中にあったのは、ビーチボーイズブライアン・ウィルソンの関係だったという。つまり、楽曲の提供やレコーディングのみ参加するという関係だ。しかし、結果的にシドとは決裂し、当時のマネージメント・スタッフ(その中には後にマーク・ボラン夫人になるジューン・チャイルドもいた)もシド抜きのピンク・フロイドの将来の可能性などまるで信じることができずに彼らから離れ、シドのソロ・アルバムにとりかかるが結局、ギヴアップしてしまう(その残骸があの2枚のアルバムである)。彼らと離れることになった当時のマネージャーは「あのとき、いま思ってるようなことを思っていたら、当然、彼らと離れなかったし、わたしもいまごろは大金持ちなっていたでしょう」と「ZigZag」だったかのインタビューで話していました。