Ziggy Stardust

Words & Music by David Bowie.
(1972年発表)



(原題直訳 「ジギー・スターダスト」(人名))



From David Bowie album,
"The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders And From Mars".

名作アルバム度 ☆☆☆☆☆

「ジギー・スターダスト」 (デイヴィッド・ボウイ)


歌詞は、次のURLから
http://www.oldielyrics.com/lyrics/david_bowie/ziggy_stardust.html




名曲度 ☆☆☆



邦題 「屈折する星くず」 (デヴィッド・ボウイ







Ziggy played guitar,
ジギーがギターを弾いて
Jamming good with Wierd and Gilly,
ウィアードとギリーといいジャムになった
The Spiders from Mars.
火星から来た蜘蛛たち
(ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ)だ*1
He played it left hand,
ヤツの演奏は左利きなんだが、
But made it too far,
そいつがとびきりの代物で
Became the special man,
あいつは特別な人間となって
Then we were Ziggy's Band.
おれたちは
そうやってジギーのバンドになったんだ




Ziggy really sang,
ジギーのヤツは本当に歌えた
Screwed up eyes and screwed down hairdo
目を吊り上げて、髪をひねって垂らして
Like some cat from Japan,
日本から来たヤツみたいだった
He could lick 'em by smiling
微笑で人をひきつけて
He could leave 'em to hang
みんなをすっかり虜にして
Came on so loaded man,
すごく力のある堂々とした人間として振舞った
Well hung and snow white tan.
巨根で、雪のように白い肌を紅くした




So where were the spiders while the fly tried to break our balls ?
蝿どもがおれたちの楽しみをブチ壊そうとしているときに
蜘蛛たちはどこにいたのだ?
Just the beer light to guide us,
おれたちを導いていたのはひたすらビールという光だった
So we bitched about his fans
そうやって、おれたちはヤツのファンをくさしてた
And should we crush his sweet hands ?
おれたちは
あいつのあのすばらしい手を潰してしまうべきだったのかもな




Ziggy played for time,
ジギーはリズムで弾いて
Jiving us that we were Voodoo
おれたちみんなを
ヴードゥーの呪術師であるかのような気にさせた
The kids was just crass,
ファンのガキどもはただの鈍いアホだった
He was the nazz
ヤツはラリ公だった
With God given ass
神から授かったゲスな才の持ち主だったね
He took it all too far but boy could he play guitar.
あいつはあらゆることをあまりにもやりすぎてしまったんだな
だが、すっげえギターを弾いてたぜ、あの野郎はよ*2




Making love with his ego
自分の自我と交接して
Ziggy sucked up into his mind
ジギーは自分の心に吸い上げてしまった
Like a leper messiah
さながらレプラを病んだ救世主だった
When the kids had killed the man
ガキどもがあの男をダメにしてしまったとき*3
I had to break up the band
おれはバンドを解散せざるをえなかった




Oh yeah
そうさ、
Ooooooo
ウーーー
Ziggy played guitar
ジギーのギターは凄かったぜ






Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞





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一般に「ロック・オペラ」と言われるものがそうなのだが、すべてが楽曲によってのみ語られるので、例えば映画や小説や漫画やTVドラマ(もっと言えば、叙事詩や演劇や舞踏や民間伝承)などと違って、明確なプロット(ストーリー・ライン)が把握しにくいところが、この種のロックな物語の困ったところになるのかもしれない。(でも、ベイビー、アイ・ドント・ケアだけどね)。

要するに映画や小説や漫画やTVドラマや叙事詩や演劇や舞踏や民話などとは根本的なところで「語り」(=narrative)の形式が異なるのだ。
(しいて言えば)いわば「黙示」というかたちをとっている(とでも言っておくとしようか)。
しかし、「語り」という構造は何ら変わりはない。
だから、わたしも、こうしてかろうじて何とか(この「ジギー・スターダストとスパイダーズ・フロム・マーズの台頭と凋落」という物語を)語りつづけていられるのだ。
それでは、ここで(これまでのあらすじというか)「総集編」Story So Far を小走りにしてみましょうか。



・「Five Years」
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050709

冒頭の歌でいきなり「世界はあと5年で破滅する」というこの物語(というよりもゲームというべきか?)の大原則(グランドルール)が宣告される。
「5年後の地球の破滅」、これが(それ以上は語られることのない)(語りえぬ)大きな物語となる。
そして、語りえぬ「全=体」の影響を受けたさまざまな断片がひとつの光景(シーン)として語られ、示される。
そこから、つねに全体を想像すること。歌を聴きながら歌詞の断片やそれが意識のスクリーンに像を結び形作る光景から、つねに不可視の全体を想像してみること。だが、通常、人は意識せずともそうしているのだ*4。言葉とはそういうもので、わたしたちは十分に言葉というウィルスに意識も無意識も思考も脳内も(ときには)感情も侵されているのだ。
(ロック・オペラにおける語りの形式とは)
それら(全=体の影=響を受けた)「影」や「響き」による「黙=示」なのだ。


そして世界は混乱する。




A girl my age went off her head,
Hit some tiny children
If the black hadn't a-pulled her off,
I think she would have killed them

ぼくと同じぐらいの齢の若い女の子がひとり
頭がおかしくなってしまって
何人かの小さな子供たちを殴りつけていた
もし、あの黒人が無理矢理その子を引き離さなかったら
その子は
あの子たちを殺してしまっていただろうとぼくは思う




こうした光景は(歌の外にも)(歌われることなく)多々繰り広げられているのだろう。
そして、人々は救済を求める。




And all the nobody people,
And all the somebody people
I never thought I'd need so many people

それから、すべての取るに足らない人間たち
そして、すべての立派な人間たち
ぼくは
自分がこんなに大勢の人間たちを必要としていたなんて
全然考えたこともなかった




・「Soul Love

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050710


「5年後」という語りえぬ負の全体性に対して、混乱と救済を求める声の狭間で正の断片が示される。
地球上に行き交うさまざまな愛のかたちだ。
いわば、この惑星の土壌といったものだ。地表には愛が渦巻いて大地を形成している。




・「 Moonage Daydream」

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050711



「5年後の世界の滅亡」という語りえぬ負の全体性のもとでの混乱と救済を求める声のさなかに、白昼、ひとつの「夢」が顕現する。
夢に顕われる予言という古典的な形式を踏襲した語りの手法と言えるだろう。
「救世主」来臨の予感である。




I'm a mama-papa coming for you
I'm the space invader,
I'll be a rock 'n' rollin' bitch for you

ぼくは、きみたちのためにやって来たママであり、パパなんだぜ
ぼくは宇宙の侵略者
きみのためにロックンロールな売女になってあげよう




彼はまた教師でもあるようだ、かつてのイエスのように。




Don't fake it baby,
Lay the real thing on me

ふりして作っちゃだめだぜ、ベイビー
ぼくには本物をぶつけて来い




・「Starman

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050712


そして、スターマンがすぐそこまでやって来ているのだ。




There's a starman waiting in the sky
He'd like to come and meet us
But he thinks he'd blow our minds

異星の人が空で待ってるんだ
そいつは、ぼくらのところに来たがってる
ぼくらに会いたがってるんだ
だけど、
ぼくらの心を狂わせてしまうのではないかと思ってるんだ




「5年後の滅亡」という語りえぬ負の全体性に対して、「スターマン」の(救世主としての)可能性という語りえぬ正の全体性が示され、物語はこうして新たな段階に入ることになる。




・「It Ain't Easy」

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050713

しかし、それは容易いことではない。
とくに「それ」をこの地上というとんでもないところでやろうとするのはだ・・・。




It ain't easy to get to heaven when you're going down

落ち目のときに天国にたどり着こうなんて、そいつは容易なことじゃない





・「Lady Stardust」


http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050714

地上に降りた異星の人は嘲笑を浴びるが、




People stared at the make-up on his face
Laughed at his long black hair, his animal grace

人々の視線はヤツの顔面のメークに釘付けとなり
あいつのあの黒髪のロン毛を笑い
あのケダモノじみた優美さを笑った




しかし、彼は人々を魅了していく




Lady Stardust sang her songs of darkness and disgrace
And he was alright, the band was altogether
Yes he was alright, the song went on forever
Yes he was awful nice
Really quite out of sight
And he sang all night long

レディ・スターダストは、自作の暗い、恥知らずな歌を歌った
そして、あいつは見事だった
バンドもピッタリ息が合っていた
そう、ヤツは万全だった
その歌はいつまでも心に残るほどだった
そう、あの野郎、とんでもないほど素晴らしかったぜ
まさにブッ飛んでたな
そして、ヤツは夜どおし歌ったんだ




・「Star」

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050715

この地球を救うために彼がとった方法は「ロックンロールのスター」になるというものだった。
ここに「エイリアンのロックンロール・スターの救世主」という(三題噺のような)この物語が完成する。




I could make it all worthwhile
As a rock & roll star

ぼくはそういうことをすべて価値あるものにできるんだ
ロックンロールのスターとしてね




・「Hang On To Yourself」

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050716

その彼らのステージ、




So come on, come on
We've really got a good thing going
Well come on, well come on
If you think we're gonna make it
You better hang on to yourself

だから、さあ、来いよ
おれたちはホントにステキなことをやらかしてんのさ
さあ、来るんだ、さあ、カムオン
もし、おれたちがうまくいくと思うんだったら
きみらも、しっかり自分自身につかまっているといいぜえ




はたして「5年後の滅亡」からの解放と救済は進行しているのか!?




・「Ziggy Stardust」


(そして、きょうのこの歌で)彼のその破天荒さとただならぬ力量は明かされたものの、結局、それはうまくいかなかったことが(彼の「蜘蛛」たちのひとりの口から)明かされる。


こうして「物語」(=ストーリー)はすでにして終わってしまったが、
「物語」(=語り=ナレーティヴ)はいましばらくつづいていく。


もう一度、繰り返すなら、
全体を想像すること、全=体の影=響を帯びて示される断片や光景からつねに全体を想像すること、想ってみること、できるなら(こころのスクリーン上に)像を結んでみること。
黙=示されているのは、つねに不可視の全体、それは大法螺という意味での「吹かし」でもあり、その大きさに応じた「深し」ともいえようか


(では、次回をお楽しみに)

*1:現実には、ミック・ロンソン(ギター)、トレヴァー・ボールダー(ベース)、ウディ・ウッドマンゼィ(ドラムス)の3人。

*2:言うまでもなく「ジギーのギター」を弾いていたのはミック・ロンソンだ。

*3:もちろん、「あのガキどもがあの男を殺してしまったとき」と訳すこともできるだろう。

*4:しかし、外国語のロックを聴く者には、それはまず不可能に近いことだろう。