Eyesight To The Blind (The Hawker)

Words & Music by Sonny Boy Williamson II.
(1969年発表)*1



(原題直訳 「盲人に視界を」)




From The Who album, "Tommy".
名作アルバム度 ☆☆☆☆


「トミー」 (フー)



Also you can listen to Sonny Boy Williamson II album, "Classics 1951 - 1953".
推奨アルバム度 ☆☆☆

ソニー・ボーイ・ウィリアムソンII)



歌詞は、次のURLから
http://www.myclassiclyrics.com/the_who/the-who-eyesight-to-the-blind-lyrics.html




名曲度 ☆





邦題 「光を与えて」








The Hawker:*2
行商人:

You talk about your woman
おまえ、自分の女の話をしてるんだな
I wish you could see mine,
おまえにおれの女を見せてやりたいよ
You talk about your woman
おまえは自分の女の話をしているが
I wish you could see mine,
おまえにおれの女を見せてやりたいぜい
Every time she starts to lovin'
あの女が愛の行為をはじめるとな、そのたびに
She brings eyesight to the blind.
彼女のおかげで目の見えない人間にも視界が開けてくるほどだ*3
You know her daddy gave her magic
わかるか、あの女、親父さんに魔法をかけられたんだ
I can tell by the way she walks.
あの女の歩き方を見りゃ、おれにはわかるってもんよ
You know her daddy gave her magic
そうなのさ、あの女、親父に魔法をかけられたんだ
I can tell by the way she walks.
あの女の歩き方を見りゃ、おれにはわかるってもんよ
Everytime we start shakin'
いつも、おれたちがズッコンズッコンやるときは
The dumb begin to talk.
口の利けないやつだって喋りだすってもんよ




She's got the power to heal you never fear
あの女には癒しのパワーがあるんだ、おそれることはない
She's got the power to heal you never fear
あの女には癒しのパワーがあるんだ、おそれることはない
Just a word from her lips
彼女の唇から出るほんのひとつの言葉
And the deaf begin to hear.
それで、耳が聞こえない者だって聞こえてくるってもんよ






Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






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ブルースにはお馴染みのお約束のフレーズが歌詞にも演奏にも溢れかえっているが、そんなお約束がふんだんに盛り込まれているようなこの曲「Eyesight To The Blind」は、実際にサニーボーイ・ウィリアムソン・ジュニアの作品で、アルバム中の唯一のノン・オリジナルなナンバー。
(サニーボーイのレパートリーの中でさえ、とくによく知られたブルース・ナンバーというわけでもないのだが)敢えてブルースといういかがわしい音楽をここに持ってきたところに(歌の内容以上に)物語上の(もしくは、作劇上の)意味があると言えるだろう。

この歌の歌い手として指定されている「Hawker」というキャラクター(それはまたフーがこの曲のアルバムへの引用にあった付けたサブタイトルでもあるのだが)、とりあえず「行商人」としておいたが、「鷹(=ホーク)のように鋭い目の持ち主」という意味でもこの「Hawker」という語は使われるほか、おあえつらえ向きに「詐欺師」もまた「Hawkwr」の語で示唆されている。つまり、「行商人」といういかがわしくも(物語的には)ロマンチックな都市の流民というキャラクター設定があって、その人物が歌うのが(自分の女のベッドの中での技巧が、おっめい、すげーのなんの、一度、おめいにも味あわせてやりてーぜってもんよ、という多分に誇張された自慢話(というのも(例えば、呪術とか法螺話などと同様に)ブルースの数あるサブジャンルのひとつだが)の)ソニー・ボーイ・ウィリアムスン・ジュニアのブルース・ナンバー。
おそらく評判の人物なのだろう。都市の悪場所といった(そういう「裏」とか「闇」といった語で修飾されるような)ところに出入りするような人々の間では・・・・。
そして、(そんな噂だか評判を聞きつけた)トミーの両親(おそらく父親がだろう)が(もしかしたら子供が見えるようになり、口が利けるようになるのに役立つのではないかと)この行商人のところに会いに行く。

フーム、なるほど鋭い目をした人物だ。と一目見てトミーの父親のウォーカー氏は思う。トミーの目も見えるようになれば、この1/10ぐらいは強い目をした子供になるのではないか・・・などと親は考えるのだろう。都市の下層のいかがわしげな人物に自分の子供の力になれるかどうか相談に行った父親、というのが(いかにもオペラらしい)(ロマンチック(=物語的)な挿話(=エピソード)ではないか。
この都会のあるところに目の見えない人間を見えるようにしてくれる(目つきの鋭い)「行商人」がいるらしい・・・。
やっとのことで(つてを頼りに)その人物にたどりついた父親は、彼にトミーのことを話して聞かせる、ところが(彼は酔っ払ってでもいたのだろう)



You talk about your woman
I wish you could see mine,

おまえ、自分の女の話をしているのだな
おまえにおれの女を見せてやりたいよ




とまったく話が噛みあわない。
いえ、妻じゃないんです、息子なんです、まだ小さな子供の息子の、トミーというのですね、その子がむかし、あることがあって以来、目も見えず、口も利けず、耳も聞こええなくなってしまったのです・・・・・。・・・そうか、見えないのか、だったら・・・・




Every time she starts to lovin'
She brings eyesight to the blind.

あの女が愛の行為をはじめるとだな、ウヒヒ、そのたびに
目が見えない人間にも視界が開けてくるほどだぜ



あるいは、
・・・・何だ、耳も聞こえないのか、それも大丈夫だ



Just a word from her lips
And the deaf begin to hear.

彼女の唇から出るほんのひとつの言葉
それで、耳が聞こえない者だって聞こえてくるってもんよ




と、その行商人はほとんど一方的にまくしたてる。
話自体はまるで噛みあってはいないのだが、ときおり必死の相談者にはドキッとする言葉も交錯する




You know her daddy gave her magic

わかるか、あの女、親父さんに魔法をかけられたんだ



これは、まさにトミーの場合と一致する。(・・・おまえは見なかったんだ、聞かなかかったんだ、一生、誰にも何も言ってはならない・・・・)



ところが、男が話してるのは、もちろん、そんなことではない。
やっぱり親の教育だろ、イヒヒ、あの女なァ、ありゃ、おれに言わせりゃ、ガキの頃からオヤジに・・・・じゃなきゃ、よお・・・・ウキキ・・・・とよだれの垂れそうな顔で卑猥な話を意味ありげに話しているのだ、座の余興か何かのつもりで・・・




You know her daddy gave her magic
I can tell by the way she walks.
You know her daddy gave her magic

わかるか、あの女、親父さんに魔法をかけられたんだ
あの女の歩き方を見りゃ、おれにはわかるってもんよ
そうなのさ、あの女、親父に魔法をかけられたんだ



結局のところ、(お聴きのとおり)成果はまるでなく、しっかりと無駄足になってしまったわけだが、
わたしたちは(この曲で)トミーの境遇を思う両親の奔走というのを知らされることになる。
そんな奔走は、このあともさらに繰り返されることだろう・・・・・


(しかし、ここにブルースを持って来たところが、なかなか小憎い技ありである。おそらくタイトルのせいなのだろうが、それもチェス・レーベル以前のサニーボーイの地味な曲というのが、さすがピートさん)


発表当時のアナログ・レコード盤2枚組セットでは、この曲でアルバムのA面が終わり、次の曲がB面の1曲目となる。



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【A Year Ago−Go!】




(1年前のエントリーを Playback♪)



・「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」 (ジョン・レノン
・「ふたりだけのクリスマス」 (イーグルス
・「走れ、ルドルフ」 (チャック・ベリー
・「ファーザー・クリスマス」 (キンクス
・ 「今宵はクリスマス」 (バンド)

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20041224

*1:ただし、サニーボーイのオリジナルは1951年発表の曲。

*2:映画では「(ブルースの)神」の異名をとっていたエリック・クラプトンが礼拝堂のようなところで司祭ふうの衣裳で赤いギブソンのレポールを手にして演じていた。同じ場面にはクレージー・ワールド・オヴ・アーサー・ブラウンも説教師か何かで熱演していた。

*3:たしかイエス福音書の中で何度かこういう奇跡を起こしていましたネ