Paint It Black


Words & Music by Mick Jagger and Keith Richards.
(1966年発表)



(原題直訳 「黒く塗れ」)*1



Performed by The Rolling Stones.





歌詞は、次のURLから
http://www.keno.org/stones_lyrics/paint_it_black.htm




名曲度 ☆☆☆☆☆  (名曲としての歴史的、世界的な認知度)





邦題 「黒くぬれ!」 (ローリング・ストーンズ






I see a red door and I want it painted black
赤いドアが目に入り、おれはそいつを黒く塗りたくりたくなる
No colors anymore I want them to turn black
黒に替えたくない色なんかは、ひとつもない
I see the girls walk by dressed in their summer clothes
夏服を着て歩いている女の子たちを見ても
I have to turn my head until my darkness goes
おれは顔を背けずにはいられない
そうやっておれの闇をやりすごすのだ




I see a line of cars and they're all painted black
車の列を見ると、みんな黒く塗られていた
With flowers and my love both never to come back
いくつもの花もおれの恋人も、
どっちもけっして戻っては来なかった
I see people turn their heads and quickly look away
おれは見てるぜ、、おれを見たヤツらが、みんな、すぐに目をそらしてしまうのを
Like a new born baby it just happens ev'ry day
そんなことは、赤ん坊が生まれるようなもので、毎日起きていることなんだ




I look inside myself and see my heart is black
おれは自分の内面を覗き込み、
おれのハートが真っ黒なのを目にする
I see my red door and it has been painted black
自分の家の赤いドアを見たら、黒く塗られてしまっていた
Maybe then I'll fade away and not have to face the facts
たぶん、おれは消えて、いなくなってしまうのだろうから、
そういういろんな事実には直面しなくてすむんだろう
It's not easy facin' up when your whole world is black
世界全体が真っ黒なときに
それと面と向かうなんて生易しいことじゃない




No more will my green sea go turn a deeper blue
おれの碧い海はもはやなく、憂鬱な色を濃くしていく
I could not foresee this thing happening to you
こんなことがきみの身に起こるなんて、
おれには予測もつかなかった




If I look hard enough into the settin' sun
沈む太陽をしっかりと睨みつけておけば
My love will laugh with me before the mornin' comes
朝が来る前におれの恋人もおれと笑ってくれるだろう




I see a red door and I want it painted black
おれは赤いドアを見ると黒く塗りたくなる
No colors anymore I want them to turn black
おれが黒くしてしまいたくない色は、何にもない
I see the girls walk by dressed in their summer clothes
夏服を着て歩いてる女たちを見ると
I have to turn my head until my darkness goes
おれは顔を背けずにはいられない
そうやっておれの心の闇をやりすごすのだ




Hmm, hmm, hmm,...
ハァーハァーハァー




I wanna see it painted, painted black
おれは見たい、世界が塗りたくられるのを、
黒く塗りたくられるのを
Black as night, black as coal
夜のように黒く、石炭のように黒く
I wanna see the sun blotted out from the sky
おれは太陽が空から消滅してしまうのが見たいんだ
I wanna see it painted, painted, painted, painted black
おれは見たいんだ、世界が塗りたくられるのを、
黒く、黒く、黒く、塗りたくられるのを
Yeah!
そうさ!





Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞




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「黒く塗れ!」
意味がありげで、べつに意味はないけど、
ローリングストーンズのサウンドミック・ジャガーのヴォーカルが
何かすごいことを歌っているのではないかと誰にも思わせてしまう、
そんな強いインパクトを持っている。
でも、ようく聴くと、ひじょうに大袈裟な失恋の歌でしかないんですね。



I have to turn my head until my darkness goes
おれは顔を背けずにはいられない
そうやっておれの闇をやりすごすのだ



「夏服着て歩いてる女の子たちを見ると、つい彼女のこと思い出しちゃってつらいよー」って、
それがこの歌の主人公の真実の瞬間。
あとはすべて取り乱してるだーけ、ハッキリ言っちゃうとね。


おれの心の中がこんなに真っ暗闇なのになんで世界は総天然色なの?
つれーよ、おもろくねーよ、やだよん、こんなの、
黒く塗りたい、真っ黒に塗りつぶしてしまいたい、この世界を。
という歌なんですね。

うんうん、その気持ちもよーくわかる。
ってだけの歌詞なんですけど・・・・


と思ったおいらが迂闊だった。

よーく聴くと、
これは恋人を(事故か何かで)喪くしてしまった男の歌なのですね。
ゴメンナサイ>ミックさま&キースさま
そう思って聴くと、メロディーも演奏もサウンドも、
そういう歌になってます。

で、歌詞で言えば、このフレーズです、



I could not foresee this thing happening to you

こんなことがきみの身に起こるなんて、
おれには予測もできなかった



いきなり、ともにふたりの関係を成り立たせていた世界の、
そのもうひとつの項が、
何らかの理由で不条理にも自分から取り上げられてしまった
となれば、
それは即>絶望>真っ暗闇であるだろう。
この「黒さ」は絶望の深さ、その強さ、強度なのだ。
しかし、彼はこう言う。



Like a new born baby it just happens ev'ry day

そんなことは、赤ん坊が生まれるようなもので、毎日起こっていることなんだ



個人の死は、毎日いたるところでさまざまなかたちで起こり、
ごく僅かなその死の周囲の者たちを除けば、
世界はそうした個的な私的な死には目をくれない。
くれたとしても、目を止めない。
地球の回転は止まらない。
時間も止まらない。
たとえ大災害による死傷者や行方不明者が多数出ようと、
TV画面の中では出演者たちがチープにハシャギまくっている。
そんなとき死の身近にいた者たちは、
そのTVのスイッチをどういう気持ちで切るのだろうか。
世界から取り残されたように、
やり場のない気持ちで、この世界のスイッチをoffにするように、
世界を黒く塗りたくってしまいたくなるのではないだろうか。
「怒り」と名づけることは大いにはばかられてしまうのだが、
いわく名づけがたいそんな激しい感情が、
この「ペイント・イット・ブラック」という曲にはある。
そして、それは(これまでの他の曲同様に)けっして歌詞だけからではわからない。




この曲がヒットしていた頃のローリングストーンズは、というか時代は、
ストーンズが歌ったこの曲について、
ジャーナリストたち(主にアメリカの)からこんなふうに訊かれてしまう、
「Is it Paint it black !..? or Paint in, Black!...? 」
(あのー、この歌なんデースケドガー、黒く塗れ、なんすか? それとも、黒人たちよ、塗りたくれ! なんすか?」と。
たしかに当時のアメリカはベトナムへの介入や米国内での人種差別撤廃などをめぐり「ブラックパンサー」など黒人過激派の闘争もさかんで激動の時代のさなかにあった。
しかし、記者のこうした質問にミックとキースとブライアンとビルとチャーリーのストーンズの面々は、思わず、苦笑、
「そんなことおれらにもわかんねーよ。わかるわけないっしょ、こっちが教えてもらいたいね」と。
そういう「問い」「設問」「問題」じたいが、おれたちには全然かんけーねえよ、という当然といえば至極当然の姿勢だ。
この曲が名曲であるのは、ストーンズが自分たちのその時点での感情を鋭く表現できる歌を書き、それをレコーディングして発表し、それが時代のさまざまな相に強いインパクトを与えたということだ。しかし、ストーンズは自分たちの感情についての表現を行ったのであって、世界や社会の「問題」を歌ったわけではない。
このスタンスがとても重要だ。
だから、マスコミの質問に(おいそれと)乗っかっててしまう愚は冒していない。

マスコミの設問(つまり「問題」化)に(おいそれと)乗ってしまうのはけっして賢いことではありません。
少なくともローリングストーンズ級にカッコイイことではありえない。


そして・・・、(例えば、くだんの質問に)題名の「Paint It Black」には「,」がないから*2・・・・などと誰にでもわかる答えを滔々と論じるのは、それは知識人ではあるかもしれませんが、ただのバカです。ということも(註)としてついでに申し添えておきましょうか。



じゃあ、今夜はもう1曲。

(も少しお待ちを・・・・・)

*1:ただし、必ずしも黒い色ではなく、「paint it black」には「あしざまに(悪く)言う」という意味もある。

*2:つまり、Paint it, black じゃないからってコト。