Idiot Wind

Words and music Bob Dylan.
(1975年発表) *1







(原題直訳 「白痴の風」)







歌詞は、次のURLから、
http://new.music.yahoo.com/bob-dylan/tracks/idiot-wind-alternate-version--556363






From the Bob Dylan box set compilation,
"Bootleg Series, Vols. 1-3: Rare & Unreleased, 1961-1991".

推奨アルバム度 ☆☆☆☆☆



アルバム「ブートレッグ・シリーズ 1〜3集」(ボブ・ディラン)より








名曲度 ☆☆








邦題「愚かな風」 (ボブ・ディラン










Someone's got it in for me,
誰かがおれのために教えてくれたんだ
They're planting stories in the press
やつらがマスコミにいろいろと話を流してるぜと
Whoever it is, I wish they'd cut it out
それがどこの連中であれ、
彼らがそれを切り捨ててくれることをおれは願ってるぜ
But when they will I can only guess.
しかし、やつらがその気なら、おれは、まあ、適当に思うしかないだろう
They say I shot a man named Gray
連中が言うことには、
おれがグレイとかいう名前の男を撃って
And took his wife to Italy,
それで、そいつの女房をイタリアに連れて行ったというんだ
She inherited a million bucks
その女は100万ドルからのカネを相続していて
And when she died it came to me.
そう、その女が死ねば、それがおれに転がり込んで来るってわけだ
I can't help it if I'm lucky.
おれがそんなに幸運なのだとしたら、おれはたまらんぜ




People see me all the time
みんな、しょっちょうおれに会ってるんだが
And they just can't remember how to act
あいつら、どう振舞っていいのか、まるで思い出せなくなってるんだ
Their minds are filled with big ideas,
やつらの頭の中は、途方のない考えやら
Images and distorted facts.
想像やら、歪曲された事実とかでいっぱいなんだ
Even you, yesterday you had to ask me where it was at,
きみでさえ、きのうは、
本当のところはどうだったの? なんて訊いてこずにはいられなかったんだ
I couldn't believe after all these years,
おれは信じられなかったぜ、この年月の間、ずっと
You didn't know me better than that
おまえは、その程度にしか このおれのことをわかってなかったのかとな
Sweet lady.
お麗しき淑女さんよ




Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your mouth
おまえがその口を動かすたびに吹いてくるんだ
Going down the backroads headin' south.
裏道を南へと向かって吹いていく
Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your teeth,
おまえがその歯を動かすたびに吹いてくる
You're an idiot, babe.
おまえはアホだよ、なあ
It's a wonder that you still know how to breathe.
おまえがいまだに息のしかたを知ってるなんて、
そいつは驚きだぜ




I threw the I-Ching yesterday, *2
おれは、きのう、「易経」で占ってみた
It said there'd be some thunder at the well. *3
それによると泉のところに雷があるということだった
I haven't tasted peace and quiet for so long
おれは、かなり長い間、安らぎや静けさを味わってきていない
It seems like living hell.
まるで生ける地獄みたいに思えてくるぜ
There's a lone soldier on the hill,
丘の上に孤立した兵士がひとりいる
Watchin' falling raindrops pour.
雨粒が降り注ぐのを見つめてる
You'd never know it to look at him,
おまえなんかには そいつを見たって全然わかりゃしないだろうな
But at the final shot he won the war
だが、やつは最後の一撃で その戦争に勝ったんだ
After losin' every battle.
すべての戦闘(ルビ=たたかい)にことごとく負けた挙句にだ




I woke up on the roadside,
おれは道端で目を覚ました
Daydreamin' about the way things sometimes are
物事がときおりそうなることを空想しながら
Hoofbeats pounding in my head at break-neck speed
蹄の音が とんでもない速さで おれの頭の中で鳴っている
And making me see stars.
それで目がチカチカしてるんだ
You hurt the ones that I love best
きみは、ぼくがいちばん愛してる人たちのことを傷つける
And cover up the truth with lies.
そして真実を嘘で覆い隠してしまうんだ
One day you'll be in the ditch,
おまえなんか、いつか、溝(ルビ=どぶ)の中にいることになるだろうよ
Flies buzzin' around your eyes,
おまえのその両目のまわりでハエが音を立てて飛び交ってるんだ
Blood on your saddle.
おまえの鞍を血に染めてな




Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing through the flowers on your tomb,
おまえの墓の上の花々の間を吹き抜けていく
Blowing through the curtains in your room.
おまえの部屋のカーテン越しに吹きつけている
Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your teeth,
おまえがそのおまえの歯を動かすたびに吹いてくるんだ
You're an idiot, babe.
おまえは低脳だぜ、おい、
It's a wonder that you still know how to breathe.
いまだに おまえが息のしかたを知ってるなんて、そいつは驚きだな




It was gravity which pulled us in
おれたちを引きずり込んだのは引力だった
And destiny which broke us apart
そして、運命がおれたちをバラバラにしてしまったんだ
You tamed the lion in my cage
おまえは、おれの檻の中にいるライオンを飼いならしはした
But it just wasn't enough to change my heart.
しかし、それだけじゃ、このおれの心を変えるには十分じゃなかった
Now everything's a little upside down,
いまや、あらゆることが少しばかり逆転している
As a matter of fact the wheels have stopped,
事実、車輪は止まってしまっている
What's good is bad, what's bad is good,
善きことが悪で、悪しきことが善だ
You'll find out when you reach the top
おまえは、自分が頂上(ルビ=トップ)にたどり着いたときにわかることだろう
You're on the bottom.
自分がどん底にいるんだとな




I noticed at the ceremony,
式の席でおれは気がついたんだ
That you left your bags behind
おまえがバッグ類を置いていってしまったことにな
The driver came in after you left,
おまえが出て行った後に運転手がやって来て
He gave them all to me,
やつが それを全部おれに渡してくれたよ
And then he resigned.
それで、それから彼は辞めていった
The priest wore black on the seventh day,
僧侶は第7日目に黒衣を着て
And walzed around while the building burned.
そしてワルツを踊りまくった
その建物が焼け落ちているというのにな
You didn't trust me for a minute, babe.
おまえは 1分たりとも おれのことを信頼しなかったぜ、おい
I've never known the spring to turn so quickly into autumn.
おれは、
春という季節がこんなにも早く秋になってしまうのを
全然、知りもしなかった




Idiot wind,
白痴の風だな
Blowing everytime you move your jaw,
おまえが その顎を動かすたびに吹いてきやがる
From the Grand Coulee Dam to the Mardi Gras. *4
グランドクーリー・ダムからマルディグラへと
Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your teeth,
おまえがその歯を動かすたびに吹いてくるぜ
You're an idiot, babe.
おまえは白痴だよ、なあ
It's a wonder that you still know how to breathe.
おまえが いまだに息のしかたを知ってるなんて、そりゃ驚きだぜ




We pushed each other a little too far,
おれたちは、お互いに少しばかり無理をさせ合ってしまったんだ
And one day it just turned into a raging storm.
そして、それが、ある日、怒り狂う嵐になってしまった
A hound dog bayed behind your trees *5
おまえのところの木々の向こうで猟犬が吠えていた
As I was packing up my uniform.
おれは自分の制服をしまいながら
Oh, I figured I'd lost you anyway,
あゝ、とにかくおれは負けてしまったのだと思案した
Why go on? What's the use?
なぜ続けるんだ? 何の役に立つというんだ?
In order to get in a word with you,
おまえに言い返すために
I'd have had to come up with some excuse.
おれは何か言い訳を考え出さないとならなくなった
It just struck me kinda funny.
それがまさにおれにつきまとっているのが、
まあ、一種、滑稽なことだぜ




I been double-crossed too much,
おれはさんざん裏切られてきたんだ
At times I think I've almost lost my mind
自分が気が狂ったも同然だと考えることも、けっこうある
Lady-killers load dice on me behind my back,
女蕩しどもが おれの知らないところでおれの立場を苦しくさせ
While imitators steal me blind
同時に模倣者どもからは、おれはめったやたらと盗まれまくる
You close your eyes and part your lips,
おまえは目を閉じて、そして唇を半開きにして
And slip your fingers from your glove
そして、おまえのその指をおまえの手袋からするりと抜く
You can have the best there is,
おまえは、そこにある最高のものを手にできるんだぜ
But it's gonna cost you all your love
だが、それには、おまえのすべての愛を要することになるだろう
You won't get it for money
おまえが それをカネで手に入れることはないのさ




Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing through the buttons of our coats,
おれたちのコートのボタンを通して吹いてく
Blowing through the letters that we wrote.
おれたちが書いた手紙の中を吹きまくる
Idiot wind,
白痴の風だ
Blowing through the dust upon our shelves,
おれたちのところの棚の上のほこりに吹いている
We're idiots, babe.
おれたちは白痴だぜ、おい。
It's a wonder we can even feed ourselves.
このおれたちが自分で食っていけてるなんて、不思議なことだぜ











Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞 081410











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【Years Ago−Go!】






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・「オール・オア・ナッシング」 (スモール・フェイゼズ)
  (All Or Nothing)
・「ホワッチャ・ゴナ・ドゥ・アバウト・イット」 (スモール・フェイシズ)
  (What'cha Gonna Do About It?)
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20070325







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・「フィクシング・トゥ・ダイ」 (カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ)
  (I-Feel-Like-I'm-Fixin'-To-Die-Rag)
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060325







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・「19回目の神経衰弱」 (ローリング・ストーンズ
  (19th Nervous Breakdown)
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050325

*1:このヴァージョン自体は(下記にべつに記したとおり)1991年になって公式には初めて「ブートレッグ・シリーズ第2集」の1曲として紹介された。

*2:易経」(ルビ=イーチン=I-Ching)は(古来、中国の「四書五経」のひとつに数えられる「知」の根底をなす書物のひとつで)アメリカでも1960年代の初めから(ユングジョン・ケージなどの影響もあって)(日本などよりも)広く若い世代の間で親しまれてきたというが、とりわけ1960年代の中頃からはお洒落な(いわゆる)進んだセンスのヒトたちの間では必須のアイテムになっていった。おそらく、ディランも(この歌の仲たがいの(?)相手と噂される当時の妻のセーラを通じて)そのあたりに親しんでいたものと推測される。なお、日本語のものとしては岩波文庫(上下2巻)で簡単に入手できるので常備本にはよろしいかもですよ。)

*3:おそらく、この卦は「易経」64卦の中の第17卦「沢雷随」に当たるものだろう。すなわち「震」が「兌」に従い、「兌」もこれを受け容れ、その道は大いに伸び栄える。自ら「随」を実践すれば天下もまた従うのだ。雷鳴(=「震」)が去り、そのエネルギーが沼沢(=「兌」)にひそんでいる。君子はこの卦象を見て、夕闇が迫れば引きこもって休息するのである。それが次のラインにしっかりとつづいていることからも、ディランがこの卦を歌っているだろうことが見てとれる。

*4:マルディグラは(キリスト教の)告解火曜日で謝肉祭の最後の日。ニューオーリンズのその祭が有名。グランドクーリー・ダムは、アメリカの西部、ワシントン州のダム。

*5:(もしも、そう考えるのがお気に召すなら)この「猟犬(ルビ=ハウンド・ドッグ)」というコトバには、セックスだけが目当ての男」といった意味合いも(英語では まあ広く世間的に)共有されている。