Idiot Wind

Words & Music by Bob Dylan,
(1975年発表)







(原題直訳 「白痴の風」) *1







歌詞は、次のURLから、
http://www.lyrics007.com/Bob%20Dylan%20Lyrics/Idiot%20Wind%20Lyrics.html







From the Bob Dylan album, "Blood On The Tracks".  *2

名作アルバム度 ☆☆☆☆☆ *3



アルバム「血の轍」(ボブ・ディラン)より






Also on the Bob Dylan live album, "Hard Rain".  *4

名作アルバム度 ☆☆



アルバム「激しい雨」(ボブ・ディラン)より







Also on the Bob Dylan box set compilation,
"Bootleg Series, Vols. 1-3: Rare & Unreleased, 1961-1991". *5

推奨アルバム度 ☆☆☆☆☆



アルバム「ブートレッグ・シリーズ 1〜3集」(ボブ・ディラン)より







名曲度 ☆☆








邦題「愚かな風」 (ボブ・ディラン










Someone's got it in for me,
ある人間がおれのためにそっと教えてくれたんだ
They're planting stories in the press
連中がマスコミにいろいろと話をばら撒いてるぜ と
Whoever it is I wish they'd cut it out quick
それがどこの連中だろうと、
おれはそいつらがさっさとそんなものは切り捨てちゃってくれるのを願ってるぜ
When they will I can only guess.
やつらが、そうしてくれるのなら、おれは大体のことを思うだけですむだろう
They say I shot a man named Gray
連中が言うには、このおれはグレイとかいう名前の男を撃って
And took his wife to Italy,
そいつの女房をイタリーまで連れて行ったんだそうだ
She inherited a million bucks
その女は100万ドルからのカネを相続してたんで
And when she died it came to me.
そう、その女が死ねば、このおれのところにそれがまわってくるんだと
I can't help it if I'm lucky.
おれがそんなにラッキーなんだとしたら、おれは たまらんぜ




People see me all the time
みんな、しょっちゅうこのおれに会ってるんだが
And they just can't remember how to act
そう、あいつらは、どう振舞っていいのか思い出せなくなっちまってるんだ
Their minds are filled with big ideas, *6
あいつらの頭の中はいろんな途方もない考えとか
Images and distorted facts.
想像や歪曲された事実なんかでいっぱいになってしまってるんだ
Even you, yesterday you had to ask me where it was at,
きみでさえ、きのうは、このおれに本当はどうだったのとか訊いてきたんだ
I couldn't believe after all these years,
おれは信じられなかったよ、いったいこの年月の間ずっと
You didn't know me any better than that
おまえは このおれのことをまったくその程度にしかわかっていなかったんだとはな
Sweet lady.
お美しい淑女さんよォ




Idiot wind,  *7
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your mouth,
おまえがその口を開くたびに吹いてくるのは
Blowing down the backroads headin' south.
裏道を通って南へと吹いていく
Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your teeth,
おまえがそのおまえの歯を動かすたびに吹いてくるのは
You're an idiot, babe.
おまえは白痴だぜ、なあ
It's a wonder that you still know how to breathe.
おまえがいまだに息のしかたを知ってるなんて
驚くべきことだぜ




I ran into the fortune-teller,
おれは占い師のところに駆け込んだ
Who said beware of lightning that might strike *8
そいつは言ったぜ、稲妻にお気をつけなさい、
打たれることになるかもしれませんよ と
I haven't known peace and quiet
おれは安らぎも静けさも知らずにきた
For so long I can't remember what it's like.
もう、かなり長い間、
それがどんなものだったのか、おれは思い出せなくなっている
There's a lone soldier on the cross, *9
不正を働いて、孤独な兵士がひとりいる
Smoke pourin' out of a boxcar door,
貨車のドアから煙が出ている
You didn't know it,  *10
おまえはそれを知らなかったんだ
You didn't think it could be done, *11
そんなことが起こり得るとは、おまえは考えやしなかった
In the final end he won the wars *12
最後の最後になって やつはその戦争に勝利したのさ
After losin' every battle.
あらゆる戦闘(ルビ=たたかい)にことごとく負けまくった挙句にだ




I woke up on the roadside,
おれは道端で目を覚ました
Daydreamin' 'bout the way things sometimes are *13
物事がときどきそうなるようなことを夢想してたんだ
Visions of your chestnut mare *14
きみの陳腐な将来への展望が
Shoot through my head and are makin' me see stars.
おれの頭を撃ち抜いて、それで、おれは目が眩んでしまっている




You hurt the ones that I love best
きみは、このおれがもっとも愛していた人たちを傷つけた
And cover up the truth with lies.
そして、真実を嘘で覆い隠してしまった
One day you'll be in the ditch, *15
いまに おまえは溝(ルビ=どぶ)の中にいることになるだろう
Flies buzzin' around your eyes,
おまえの目のまわりをハエが音を立てて飛んでるんだ
Blood on your saddle.
おまえの鞍には血が




Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing through the flowers on your tomb,
おまえの墓の花々の間を吹き抜けていく
Blowing through the curtains in your room.
おまえの部屋のカーテン越しに吹きつけている
Idiot wind,
白痴の風だよ
Blowing every time you move your teeth,
おまえが おまえのその歯を動かすたびに吹いてくるんだ
You're an idiot, babe.
おまえってやつは低脳だぜ、おい
It's a wonder that you still know how to breathe.
おまえがいまだに息のしかたを知ってるなんて、そいつは驚きだぜ




It was gravity which pulled us down *16
おれたちを引きずり下ろしたもの、
それは重力ってもんだった
And destiny which broke us apart
そして、おれたちをバラバラにしてしまったのは運命だったのさ
You tamed the lion in my cage
きみは、おれという檻の中にいるライオンを飼いならしてしまった
But it just wasn't enough to change my heart.
しかし、それだけじゃ、このおれの心を変えるまでにはならなかった
Now everything's a little upside down,
いまじゃ、何もかもが逆さまになってしまっている
As a matter of fact the wheels have stopped,
事実、車輪は止まってしまってるんだ
What's good is bad, what's bad is good,
善いことが悪で、悪いことが善になってる
You'll find out when you reach the top
きみは自分が頂点(ルビ=トップ)にたどり着いたときに気がつくだろう
You're on the bottom.
自分はどん底にいるのだと




I noticed at the ceremony,
おれは式の席で気づいたよ
Your corrupt ways had finally made you blind
きみの腐ったやり方がとうとうきみを盲目にしてしまったのだとな
I can't remember your face anymore, *17
きみの目がおれの瞳の中を覗き込むこともない
The priest wore black on the seventh day
僧侶は第七日目に黒衣を着けて
And sat stone-faced while the building burned.
それで、仏頂面してすわってたんだ
建物が焼き討ちされたっていうのにな
I waited for you on the running boards,
おれは、踏み板(ルビ=ステップ)の上で、きみのことを待ってたんだ
Near the cypress trees,
あの糸杉の木のそばで
While the springtime turned slowly into autumn.
春の季節がゆっくりと秋になっていくその間を




Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing like a circle around my skull,
おれの頭蓋骨のまわりで輪を描くように吹いてやがるんだ
From the Grand Coulee Dam to the Capitol. *18
グランドクーリーのダムから首府へと
Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing every time you move your teeth,
おまえが そのおまえの歯を動かすたびにしてくるんだ
You're an idiot, babe.
おまえはバカだぜ、おい
It's a wonder that you still know how to breathe.
いまだにおまえが息のしかたを知ってるなんて、驚きだぜ




I can't feel you anymore,
おれには、もはや、きみのことは感じられない
I can't even touch the books you've read *19
きみが読んだ本にさえ、おれは触われなくなってしまってるんだ
Every time I crawl past your door, *20
きみのところの玄関まえを這うようにして通り過ぎるたびに
I been wishin' I was somebody else instead.
おれは自分が誰かべつの人間だったらと願ってしまうほどなんだ
Down the highway, down the tracks,
街道筋へと、隘路へと
Down the road to ecstasy,
恍惚へと至るその道でも
I followed you beneath the stars,
おれは、星々の下、きみのことを追いかけた
Hounded by your memory
きみの思い出と
And all your ragin' glory.
そして、
きみのその怒れるあらゆる輝きに苦しめられながら




I been double-crossed now
おれは、いま、裏切られていたんだ
For the very last time
いよいよこれで最後というときになって
And now I'm finally free, *21
そう、おれは、いま、ようやく自由の身だ
I kissed goodbye the howling beast
吠え立てる獣(ルビ=けもの)に おれはさよならのキスをした
On the borderline which separated you from me.
きみをこのおれから分け隔てる境界線の上で




You'll never know the hurt I suffered
きみには、
このおれが負った傷のことは けっしてわかることはないだろう
Nor the pain I rise above,
このおれが乗り越えた苦しみにしてもな
And I'll never know the same about you,
そして、このおれにしたって、
きみについては同じこと、けっしてわかりゃしないだろう
Your holiness or your kind of love,
おまえのその聖性とか、おまえらしいのその愛とか
And it makes me feel so sorry.
そして、そのことが
このおれをひどく残念な気持ちにさせるんだ




Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing through the buttons of our coats,
おれたちのコートのボタンの中を吹き抜けていく
Blowing through the letters that we wrote.
おれたちが書いた手紙の間を吹き抜けていく
Idiot wind,
白痴の風だぜ
Blowing through the dust upon our shelves,
おれたちのところの棚の上のほこりに吹きつける
We're idiots, babe.
おれたちは低脳だぜ、なあ
It's a wonder we can even feed ourselves.
おれたちが自分たちで食っていけてるなんて、不思議なこったぜ









Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞 081410









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では、つづけて、きょうのこの歌の別バージョンを聴いてみましょう。
1991年に発表されたボックス・セットCDの「ブートレッグ・シリーズ」のCD#2からです。

*1:「白痴の風」とは何だろうか? 歌のはじまりのくだりからすれば、それは(世間のつまらない風評としての)「バカな話」としての「風」のようでもあり、また、そのサビ(=コーラス)の部分からすれば、それは「アホな息吹(ルビ=いぶき)」としても聴くことができよう。むしろ感じとしては「アホな匂い」とさえ聴けるかもしれない。しかし、歌全体を聞き終わって(また、今夜、つづけて聴くことになる きょうのこの歌の別バージンを聞き終わってみて)思うのは、「ふたり」の間に(風のように吹き込んできて)(「ふたり」の間をいつのまにか思いっ切りダメにしてしまう)(何か自分たち以外の(あるいは自分たちに端を発すものではない))(何か自分たちとは違った)(それでいてその違和感を許すことのない)(世間的な、社会的な)(言説とか価値みたいなもの の)(その得体の知れない力、威力のようなものとして(わたしには)考えられるのだが、)(いかがだろうか?)(そして、その風は)いつも、いささか型どおりのステレオタイプな物腰で、偉そうに勝ち誇ったような顔で吹いている(のがつねであるような)ものだ。そうした いわく言葉や文章では言い難いものを(わたしはこれから)「白痴の風」(ルビ=イディオット・ウィンド)と呼ぶことにしよう。(風とは怪しげな「空気」とやらの移動態であるのならば、なおさらに。wink)まあ、ディランのこの歌とは関係のないことかもしれませんがネ。

*2:このアルバムからは、すでに「ブルーにこんがらがって」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050530 、「きみは大きな存在」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20070707 、「雨のバケツ」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050317 がここで紹介されていますので、よろしければどうぞ♪

*3:ぼくはあんまりこの時期のミスターDの声にも歌い方にも(つまり「歌」に)心動かされることはないのですけどノーもア。

*4:1974年の「ローリング・サンダー・レヴュー」と銘打ったロックやフォークのビッグ・ネームたちを招いてのディランの全米ツアーを収録した1975年発表のこのライブ・アルバムに収録されたきょうのこの歌には、いくらかスタジオ録音のこの歌とは歌詞に異同があり、それについては逐一、その箇所に註として附しておいたのでご必要な方はどうぞご参照ください。また、このアルバムからは、すでに「マギーズ・ファーム」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050729 、「いつもの朝に」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050519 、「メンフィス・ブルース・アゲイン」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050103 、「きみは大きな存在」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20070707 がここで紹介されていますので、よろしければアルバムのお伴にどうぞ♪

*5:1991年に発表されたこのボックス・セット・コンピレーションに収録されているきょうのこの歌「愚かな風」は、アルバム「血の轍」のものとは違ったレコーディングによるのものでオルガンが入っていないことをはじめ、歌詞の上でもかなりの異同があるので、あとでつづけてそちらのほうも聴いてみることにしましょう。なお、このアルバムからは、すでに「辛いニューヨーク」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20071203 、「デイビー・ムーアを殺したのは誰?」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20071020 、「船が入ってくるとき」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060701 、「時代は変る」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050219 、「さらば、アンジェリータ」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061111 、「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20080303 、「出ていくのなら」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061119 、「ライク・ア・ローリング・ストーン」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050326 、「アイ・シャル・ビー・リリースト」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060117 、「イフ・ナット・フォー・ユー」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20041221 、「ブルーにこんがらがって」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050530 、「テル・ミー」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050202#p2 がここで紹介されていますので、よろしければアルバムのお伴にどうぞ♪

*6: この部分、1975年発表のライヴ・アルバム「激しい雨」では「with false ideas,(間違った考えとか)」と歌われている。

*7:「バカの気配がしてくるぜ」と聴くのもいいだろう。

*8:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「She said(その女が言ったんだ)」と歌われている。

*9:うん? 脱走兵か何かなのだろうか?

*10:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「He didn't know it(彼はそれを知らなかった)」と歌われている。

*11:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「He didn't think」と歌われており、

*12:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「But at the final shot(だが、最後の一発で)」と歌われている。

*13:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「the way things really are(物事の本当のあり方を)」と歌われている。

*14:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「Vision of your smokin' tongue(おまえの(大麻を)吸った上で話すその展望が)」と歌われている。(最初、わたしは(ナイーヴなことに)(これを)「おまえの煙を出してる舌の映像が」などと記してしまったが、それは(明らかに)間違いですねスンマヘン,ニハジトカイテナンテカンジカナ?ヅカイ。(ちょっと考えればわかることにちゃーんと(chant詠唱のように警鐘鳴らしてナイ?)ぼくに気づかせてくれるthe Muse(詩神、美神)に毎度毎度ナンマイダーリンありがとう♪ ホント、不思議だ、いつも助けてもらってるミープリーズ。)

*15:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「you'll be in the grave(おまえは墓の中にいることになるだろう)」と歌われている。

*16:これは(英語では)「おれたちをダメにしてしまったのは生真面目さだった」とも深聞きすることもできる。

*17:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「I can't recall your face anymore(おれはもはやあまえの顔を思い浮かべられなくなっている)」と歌われている。) おれは もう きみの顔なんて思い出せなくなってるんだ Your mouth has changed, きみの口ぶりも変わってしまった Your eyes don't look into mine.  ((ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分のアタマに「And(そして)」をつけて歌われている。

*18:「グランドクーリー・ダム」はアメリカ合衆国太平洋岸のワシントン州にあるグランドクーリー河のダムで、首府は(言うまでもなく)(アメリ東海岸側の)ワシントンD.C,のことだ。(したがって、これは「全米を西から東まで」といったことになりますね。)

*19:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「I can't even touch your clothes you wear(おれはきみの着る服にも手を触れられなくなっているんだ)」と歌われている。

*20:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「Everytime I'm coming to your door(いつも、おれがおまえの玄関のところにくるたびに)」と歌われている。

*21:ライブ・アルバム「ハード・レイン」では、この部分は「And now I finally see(そして、いま、おれはようやく見えるようになったんだ)」と歌われている。