Who Killed Davey Moore ?

Words & Music by Bob Dylan.
(1963年発表)






(原題直訳 「デイヴィー・ムアを殺したやつは?」) *1  *2






歌詞は、次のURLから、
http://www.lyricsdepot.com/bob-dylan/who-killed-davey-moore.html







From the Bob Dylan live album,
"The Bootleg Series Vol. 6: Bob Dylan Live 1964, Concert at Philharmonic Hall".
*3

名作アルバム度 ☆☆☆☆☆



アルバム「アット・フィルハーモニック・ホール」(ボブ・ディラン)より





Also on the Bob Dylan compilation album,
"Bootleg Series, Vols. 1-3: Rare & Unreleased, 1961-1991".  *4

推奨アルバム度 ☆☆☆☆☆



アルバム「ブートレッグ・シリーズ 1〜3集」(ボブ・ディラン)より






名曲度 ☆☆







邦題「デイビー・ムーアを殺したのは誰?」 (ボブ・ディラン








Who killed Davey Moore,
デイヴィー・ムアを殺したやつは
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何が原因だったのか?




"Not I," says the referee,
「わたしじゃない」とレフェリーは言う
"Don't point your finger at me.
「わたしを指差すような真似はしないでくれ
I could've stopped it in the eighth *5
わたしは8ラウンドで試合をストップすることもできたかもしれない
An' maybe kept him from his fate,
そうすれば、もしかしたら、彼をその死から遠ざけていたかもしれない
But the crowd would've booed, I'm sure,、
At not gettin' their money's worth.
しかし、観衆は
自分たちのカネに見合ったものが得られないと
非難の声を上げることになっていただろう
It's too bad he had to go,
彼があんなことになってしまったのは、とんでもないことだが
But there was a pressure on me too, you know.
しかし、わたしにもプレッシャーはあったのだ、わかるだろ
It wasn't me that made him fall.
彼が命を落とすことになってしまったのは
このわたしのせいではないんだ
No, you can't blame me at all."
そう、あんたらにはこれっぽっちもわたしを責めることはできないよ」




Who killed Davey Moore,
デイヴィー・ムアを殺したやつは
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何がその原因なのか?




"Not us," says the angry crowd,
「おれたちじゃないぜ」と怒れる観衆が言う
Whose screams filled the arena loud.
けたたましくアリーナを埋めていたのは彼らの大歓声だった
"It's too bad he died that night
「あの晩、やつが死んだのはまったくひどいことだ
But we just like to see a fight.
だがな、おれたちは、ただ試合が見たかっただけなんだ
We didn't mean for him t' meet his death,
おれたちは、
べつにやつに死ぬまでやってくれってつもりはなかったんだ
We just meant to see some sweat,
おれたちはただ何か手に汗にぎるものを求めてたんだ
There ain't nothing wrong in that.
それは全然いけないことはないはずだぜ
It wasn't us that made him fall.
やつが命を落とすことになったのは、おれたちのせいじゃないよ
No, you can't blame us at all."
そうさ、あんたらはまったくおれたちのことを責めることはできないぜ」




Who killed Davey Moore,
デイヴィー・ムアを殺したやつは
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何が原因なのか?




"Not me," says his manager,
「おれじゃないね」と彼のマネージャーが言う
Puffing on a big cigar.
大きな葉巻を吹かしながら
"It's hard to say, it's hard to tell,
「なかなか口で言うのは難しいことなんだ、
伝わりにくいことなんだ
I always thought that he was well.
おれは、つねにあいつは万全だと思ってたんだ
It's too bad for his wife an' kids he's dead,
やつの奥さんや子供たちにとっては あれはとんでもないことだ
やつが死んでしまったのだからな
But if he was sick, he should've said.
だが、もし、やつが体調が芳しくないんだったら
あいつは言ってくれてたらよかったんだ
It wasn't me that made him fall.
やつに命を落とさせたのは、このおれじゃあないぜ
No, you can't blame me at all."
そうさ、あんたらにはこれっぽっちもこのおれを責めることはできやしないぜ」




Who killed Davey Moore,
デイヴィー・ムアを殺したやつは
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何が原因なのか?




"Not me," says the gambling man,
「おれじゃねえよ」と賭博業者が言う
With his ticket stub still in his hand.
その手の中にはまだチケットの切れ端がある
"It wasn't me that knocked him down,
「あいつをKOで倒したのは、このおれだったわけじゃないんだぜ
My hands never touched him none.
おれのこの手はまったくこれっぽちもやつには触れてないんだ
I didn't commit no ugly sin,
おれはいっさいあの醜い罪業には関わっちゃいなかった
Anyway, I put money on him to win.
とにかく、おれはやつの勝ちにカネをつぎ込んだんだ
It wasn't me that made him fall.
やつに命を落とさせたのはおれじゃなかった
No, you can't blame me at all."
そうさ、あんたらにはこれっぽちもこのおれを責めることはできねえぜ」





Who killed Davey Moore,
デイヴィー・ムアを殺したやつは
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何が原因なのか?




"Not me," says the boxing writer,
「わたしじゃないよ」とボクシング記者が言う
Pounding print on his old typewriter,
使い古しのタイプライターで記事を打ちながら
Sayin', "Boxing ain't to blame,
こう言っている
「ボクシングに罪があるわけではない
There's just as much danger in a football game."
フットボールの試合にも同程度の危険性はあるものだ」
Sayin', "Fist fighting is here to stay,
さらに「拳の闘いはこの国には根づいているものだ
It's just the old American way.
それは古くからのまさにアメリカらしきものなのだ
It wasn't me that made him fall.
彼に命を落とさせたのは、わたしではなかった
No, you can't blame me at all."
そうさ、きみたちはこのわたしをまるで責めることはできんのだよ」




Who killed Davey Moore,
デイヴィー・ムアを殺したやつは
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何が原因なのか?




"Not me," says the man whose fists
Laid him low in a cloud of mist,
「おれではないよ」と
その拳で彼を打ちのめした男がひどく当惑した中で言う
Who came here from Cuba's door
キューバの扉からこの国にやって来た
Where boxing ain't allowed no more.
そこではもはやボクシングは禁じられている
"I hit him, yes, it's true,
「おれはやつを殴った、それは本当のことだ
But that's what I am paid to do.
だが、おれはそれでカネを貰ってるんだ
Don't say 'murder,' don't say 'kill.'
殺人だとか言わないでくれ、殺しとか言わないでくれ
It was destiny, it was God's will."
あれは運命だったんだ、あれは神の意志だったんだ」




Who killed Davey Moore,
誰がデイヴィー・ムアを殺したか、
Why an' what's the reason for?
どうして、そして何が原因なのか?







Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞 012110











∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮








いかがでしたか? *6


同じこの出来事について、
当時の音楽ジャーナリズムやフォーク・ソング・ファンの間で
ディランのよきライバルと見られていたフィル・オクスも
「デイヴィー・ムア」というタイトルで歌にしているので、
つづけてそれを聴いてみましょう。


ふたりの(この出来事に対する)ボクシング・スタイル(?)の対比が面白いですよ。
試合後のあなたの判定が楽しみですよ。



では、紹介しましょう、青コーナー、フィル・オクス!!

*1:もちろん、「誰がデイヴィー・ムアを殺したのか?」という問いでもあるが、歌の各節がいずれも「Not me(わたしじゃないよ)」というセリフではじまっていることを考えると、この「Who」を関係詞的に「〜した者」として「デイヴィー・ムアを殺したやつ」と聴いたうえで、そうなのか(オマエはという意味での疑問符「?」を付したタイトルと考えるべきだろう。だからこそ次々に関係者が登場して「おれじゃないぞ」と述べていくセリフが力を持ったこの歌の形式をそこに作り出し、また支えていると言ってよいだろう。この「問いと答え」(は一種の「コール&レスポンス」でもあるが)の形式自体は(勿論)ディランの独創ではなく、古くからの童謡や民謡(=フォークソング)、ブルースなどにもしばしば聴かれる形式だ。

*2:プロボクシングの世界にまだチャンピオンの認定団体がひとつだけで(それが分裂も乱立もしていなかった時代)世界にはその体重のクラスにそれぞれたったひとりの唯一無二の世界チャンピオンがいるだけだった、そんな時代の1963年3月、アメリカ、ロサンジェルスドジャーズ・スタジアムで行われた世界フェザー級タイトルマッチでチャンピオンのデイヴィー・ムーア(アメリカ)が亡命キューバ人のメキシコからの挑戦者、シュガー・レイモスに10ラウンドに2度のダウンと1度のロープダウンを喫してKO寸前の状態でラウンド終了のゴングに救われ、終了後、コーナーで陣営から試合放棄の申し出によるTKOで破れ、1959年に当時のチャンピオン、ホーガン・バッセーをKOして奪取して以来、4年間に渡って5度の防衛戦(そのうち2度は1960年と61年の再度にわたる来日による日本の強打者、高山一夫(帝拳)の2度の挑戦を退けてのものだった)に勝利して保持してきたチャンピオンの座から陥落した。試合後、ムーアは、控え室で記者団の取材を受け、再戦への意欲を語るなどしていたが、記者たちが去った後に激しい頭痛を訴えて意識を失い、最寄の病院に運び込まれたが、そのまま一度も意識を回復することなく、試合から4日後の3月25日に昏睡状態のまま命を失った。このリング禍に全米のマスコミは騒然となり、一部の政治家や、聖職者。教育関係者を中心に根強いボクシング排斥の声が沸き起こるなどした。当時、まだ21歳のボブ・ディランがきょうのこの歌を書いたのは、そんな騒ぎの中でのことだったが、この歌は、当時、何度かステージで歌われただけで、結局、スタジオでのレコーディングはされることはなく、30年近くたった1991年と2003年に発表された(ディランの未発表トラックを集めた)オフィシャルな「ブートレッグ・シリーズ」の「第1〜3集」と「第6集」で紹介されるまでは海賊盤以外では聴くことのできない歌だった。

*3:2004年に発表された1964年10月31日、ニューヨークのフィルハーモニック・ホールでのディランのコンサートからのライヴ・レコーディングで、このアルバムからは、すでに「時代は変る」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050219 、「出ていくのなら」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061119 、「イッツ・オールライト・マ」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20070808 、「ミスター・タンブリン・マン」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20041217 「はげしい雨が降る」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050615 「第3次世界大戦を語るブルース」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060304 、「くよくよするなよ」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061125 、「ハッティ・キャロルの寂しい死」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050507#p2 、「神が味方」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060209 、「悲しきベイブ」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061123 、「オール・アイ・リアリー・ウォント」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061123 がここで紹介されていますので、よろしければアルバムのお伴にどうぞ♪

*4:1991年に発表されたこのボックス・セット・コンピレーションに収録されているきょうのこの歌「デイヴィー・ムーアを殺したのは誰?」は、1963年10月26日のニューヨークのカーネギー・ホールでのコンサートからのライヴ・レコーディングによるものだ。なお、このアルバムからは、すでに「船が入ってくるとき」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060701 、「時代は変る」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050219 、「さらば、アンジェリータ」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061111 、「出ていくのなら」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20061119 、「ライク・ア・ローリング・ストーン」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050326 、「アイ・シャル・ビー・リリースト」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060117 、「イフ・ナット・フォー・ユー」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20041221 、「ブルーにこんがらがって」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050530 、「テル・ミー」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050202#p2 がここで紹介されていますので、よろしければアルバムのお伴にどうぞ♪

*5:(どーでもええことやが)これは9ラウンドの間違いだろう。当時のヴィデオを見ると、8ラウンドはむしろムーアが優勢のラウンドだで、ラモスの優位が明らかになったのは9回からだった。

*6:(フィルハーモニック・ホールのライブには)歌のまえに(ギターのチューニングをしながらの)ディラン自身の照れくさそうなこんなMCが入っている。>>>(ギターのチューニングをしながら)「This a song about a boxer...It's got nothing to do with boxing, it's just a song about a boxer really.(次のは・・・(ギターをつまびきながら間を置いて)ボクサーについての歌、ボクサーだよ、ボクシングとは何の関係もないんだけどね、ボクサーのことを歌った歌ね、まさしくね。) (ギターをかき鳴らして間を置いてから)And, uh, heh heh, it's not even having to do with a boxer, really. It's got nothing to do with nothing.(それで、えーと、ウフフ、全然、ボクサーのことでもないな、本当は。べつに全然 何のことでもないんだよ、これは(苦笑)(会場、笑い))(ギターをかき鳴らして間を置いてから))But I fit all these words together,that's all..... (だけど、ぼくは言葉をうまく一緒にして合わせてみたんだ。ってだけのことさ。)It's taken directly from the newspapers, Nothing's been changed...Except for the words, heh.」((ちょっと真面目な口調になって)これは新聞からそのまま取ってきたもので、いっさい変更は加えてない。ただ言葉以外はね(笑)(会場、笑い))