Cruel War



Words & Music by Peter Yarrow and Paul Stookey.
(1962年発表)



(原題直訳 「むごたらしい戦争」)



From Peter, Paul & Mary album "Peter, Paul And Mary".
名作アルバム度 ☆☆☆☆☆

「ピーター・ポール&マリー」 (ピーター・ポール&マリー)





歌詞は、次のURLから
http://www.oldielyrics.com/lyrics/peter_paul_and_mary/cruel_war.html




名曲 ☆☆☆☆


邦題 「悲惨な戦争」 (ピーター・ポール&マリー)








The cruel war is raging,
むごたらしい戦争が荒れ狂っている
Johnny has to fight
ジョニーも戦わなければなりません
I want to be with him
わたしはあの人と一緒にいたいのです
From morning to night.
朝から晩まで
I want to be with him,
わたしは彼といたいのです
It grieves my heart so,
それが
わたしの心をひどく悲しくさせてしまうのです
Won't you let me go with you?
ねえ、あなたも
一緒に行っちゃだめなの?
No, my love, no.
だめだよ、きみ、だめなんだ




Tomorrow is Sunday,
明日は日曜日
Monday is the day
月曜日がその日だわ
That your Captain will call you
隊長さんにあなたは呼ばれて
And you must obey.
そう、あなたは従わなければならないの
Your captain will call you
あなたの隊長さんが
あなたのことを呼び出すのね
It grieves my heart so,
それが
わたしの心はひどく悲しくしてしまうの
Won't you let me go with you?
ねえ、あなた
あたしのこと一緒に連れてってくれないの?
No, my love, no.
だめなんだ、きみ、だめなんだよ




I'll tie back my hair,
あたし、髪をうしろにして結ぶわ
Men's clothing I'll put on,
男物の服を着るわ
I'll pass as your comrade,
あなたの戦友たちにもわからないわ
As we march along.
一緒に行軍してても
I'll pass as your comrade,
あなたの戦友たちに
あたし、気づかれずにすむわ
No one will ever know.
誰にも絶対にわからないわよ
Won't you let me go with you?
ねえ、あたしのこと
あなたと一緒に連れてってくれない?
No, my love, no.
だめだよ、きみ、だめなんだ




Oh Johnny, oh Johnny,
あゝ、ジョニー、おゝ、ジョニー
I fear you are unkind
ひどいわ、あなたって冷たいのね
I love you far better
Than all of mankind.
あたしは
全人類のことなんかより
あなたのことをはるかにずっと愛しているのよ
I love you far better
あなたのことを
はるかにずっと愛しているのよ
Than words can e're express
言葉なんかで言えるよりも、もっとずっとよ
Won't you let me go with you?
ねえ、あなた
あたしのこと、あなたと一緒に連れてって
Yes, my love, yes.
いいよ、きみ、わかったよ



Yes, My Love, Yes.
うん、そうだよね
ぼくの愛するきみ






Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






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作者としてピーター・ポール&マリー(PPM)のふたりのP氏がクレジットされているけれども、この歌の原曲は南北戦争にまで遡ることのできる(作者不詳の)アメリカのフォークソングということで(さらにそのルーツはイングランドにまで遡ることができるというが)、実際、南北戦争というのは人類の歴史上における初めての(近代的な意味での)「全面戦争」(=総力戦)と位置づけられる戦争で、そのむごたらしさにおいては、まさに「The Cruel War」と呼ぶにふさわしい「むごたらしい戦争」であったという。

英語で言えば「The Civil War」(つまり、「ザ・内乱」)というこの戦争での戦死者は(南北両軍を合わせて)62万3000人を数えるというが、この数字は第2次世界大戦におけるアメリカ軍の戦死者総数(の概数)である41万人弱を大きく上回る数字となっている。1861年から1865年にいたるこの戦争では、また、それまでになかった多くの新兵器も使われており、地雷、機関銃、鉄条網、潜水艦などが挙げられるほか、ライフルの射程距離もこの戦争の間に大幅に伸びたということだ。つまり、そうした(ヨーロッパやアメリカ本土における)科学上の発見や技術革新の成果が大々的にこの戦争に投入され、それが(戦争というものに本来的に伴う)「むごたらしさ」をよりいっそう拡大することになったわけだが、そうした戦争の新たな局面を現実のものとすることになったのは、やはり、北部の圧倒的な工業生産力の優位性であり、それに加えて、北部に勝利をもたらしたその要因として、強力で定期的な補給を可能にした北部の(やはり圧倒的に優位だった)鉄道保有路線距離、そして素早い情報伝達を可能にした電信通信網の広域配備、さらには(イギリスによる「南部連合」の承認を阻止し、諸外国の干渉や南部への協力を許さなかった)北部指導者たち(つまり、戦争勃発当時のアメリカ合衆国連邦政府首脳ということになるが)の外交力(すなわち国際政治力)(これにはチェロキー・インディアンの一個大隊を北軍として編成するという政治軍事的な成果も含まれる)、そして兵力の大量補強を可能にした北部の徴兵制の採用も挙げられるだろう。南北戦争が歴史上初の近代的な「全面戦争」(総力戦)と位置づけられる所以である。そして、この戦争後に第18代合衆国大統領となる北軍の英雄、グラント将軍のように(開戦当時は一介の大佐でありながらも)(いち早く)「全面戦争」というものを理解した軍事上のリーダーの存在も見落としてはならぬだろう。

・・・と、まあ、野暮な話はこれぐらで切り上げるとして、


きょうのこの歌「悲惨な戦争」をPPMが自分たちの(オリジナル)「作品」と(クレジット)してレコーディングしたのには(もちろん、そのメロディーや絶妙の3声コーラス、さらにはシンプルなツインのギターによる独自のアレンジについての自負のほかにも)(歌詞の面においても)、それまでの伝承によるものとは異なる彼らのオリジナルな発想が(大きく見て)この歌にふたつほどあるからだろうと思われる。そのひとつは、




I'll tie back my hair,
Men's clothing I'll put on,
I'll pass as your comrade,
As we march along.
I'll pass as your comrade,
No one will ever know.


あたし、髪をうしろに結うわ
男物の服を着るわ
あなたの戦友たちにもわからないわよ
一緒に行軍してても
あなたの戦友たちに、あたし、気づかれずにすむでしょう
誰にも絶対にわからないわよ




という「男の姿になって一緒に戦地に赴くわ」というくだりがある。
原曲の旧来の伝承ヴァージョンにも「わたしたち女も戦うわ」という(おそらくは(当時の)(戦意高揚の)プロパガンダだったのだろうが)そういうくだりはあったものの、あくまでも「婦人組織」を結成しての参戦(それも銃後のものと推測されるもの)でしかなかった。たとえスカーレット・オハラのように気丈に生きるしかなくなった女性でさえ(当時の「女性」というスタンダードからして)(男装して従軍するのは)(いくらなんでも)荒唐無稽にすぎるだろう。
しかし、ピーター・ポール&マリーによってこの歌が洗練された新たなメロディーとともに生まれ変わった1962年には(おそらく)(旧来の女性の(女心の)一途さとともに)、この心意気が(けっして荒唐無稽なものとはされずに)ひとつのフィクションとして抵抗なく受け容れられるようになっていたのだろう。
そして、もうひとつ、彼らのオリジナルといえるのが次のくだりだ、




I love you far better
Than all of mankind.


あたしは、全人類のことなんかより
あなたのことをはるかにずっと愛しているのよ




おそらく、これが(当時としては、やはり)とても新しかったのではないだろうかと想像される。
古くからのあたりまえの感情ではあるけれども、ヒューマニズムが高々と叫ばれた20世紀の後半において、そのあたりまえの個人的な感情を高らかに(また、ぬけぬけと)言い放ってしまう、その痛快さとそのインパクトが新鮮だったのではないだろうかとわたしには思われる。
先に引いた箇所が(この歌の)ドラマ的な(演出上の)オリジナリティーとすれば、こちらはこの歌の意識における(もしくは思想的な)オリジナリティーと言えるのではないだろうか。
そして、この一点において、きょうのこの歌「悲惨な戦争」をピーター・ポール&マリーのオリジナル曲とすることに異を唱える気にはならないのだ。
作詞・作曲 ピーター・ヤーロー、ポール・ストゥーキーなのである。


では、次にこの歌の原曲となった「Cruel War」のふたつの違ったヴァージョンをつづけて紹介するとしよう。
((いずれのバージョンについても)レコーディングされたものについては(少しだけ調べてみたが)見当たらなかった。)