Song In The Blood

Words & Music by Jacques Prévert. *1
(English translation by Lawrence Ferlinghetti). *2
(1968年発表) *3










(原題直訳 「血の中の歌」)








歌詞は、次のURLから、
http://lyrics.doheth.co.uk/songs/joan-baez/







From the Joan Baez album, "Baptism". *4



名作アルバム度 ☆☆



「バプティズム」 (ジョーン・バエズ


名曲度 ☆








邦題「(不明)」 (ジョーン・バエズ









there are great puddles of blood on the world
大きな血だまりがあるんだ、この世界にはね
where is it all going?
そいつはみんなどこへ行くんだろう?
all this spilled blood?
その流された血は全部
is it the earth that drinks it and gets drunk?
地球なのかなあ? そいつを飲んで、そして酔っ払っちまうのは?
funny kind of drunkography then,
だとしたら、滑稽な類(=たぐい)の酔いっぷりだぞ
so wise,
えらくしっかりして
so monotonous,
えらく単調で
no, the earth doesn't get drunk
いや、地球は酔っ払ったりゃしませんな
the earth doesn't turn askew
地球が斜めに回ったりするもんかい
it pushes its little car regularly,
そいつはちゃんと規則正しく自分の車を押していくのさ
it's four seasons,
四季ってものをな
rain,
雨に、
snow,
雪に
hail,
雹に
fair weather,
いい天気
never is it drunk
けっして、そいつは酔っ払ったりなどしませんぞ
it's with difficulty
そいつは困難さを抱えながら
it permits itself from time to time
ときどき、自らに許しを与えて
an unhappy little volcano
不幸せな小さな火山を噴火させたりはするけどな
it turns,
そいつはまわるのだ
the earth,
この地球は
it turns with its trees, its gardens, its houses
その木々や、その庭園や、その家々ともに そいつは回るのだ
it turns with its great pools of blood
その大いなる血だまりとともにまわるのだ
and all living things turn with it
そして、すべての生けるものも、それとともに回り、
and bleed
そして血を流すのだ




it doesn't give a damn
そいつはまるでおかまいなし
the earth
地球ってやつはな
it turns
そいつはまわる
and all living things set up a howl,
そして、すべての生けるものどもは吼え立てる
it doesn't give a damn,
そいつは へ とも思いやしないんだ
it turns
そいつはまわる
it doesn't stop turning
そいつはまわるのをやめないぜ
and the blood doesn't stop running
だから、血が流されるのも止まらない




where's is it going
そいつはどこへ行くんだろう?
all this spilled blood?
その流された血は全部
murder's blood, war's blood,
殺人の血、戦争の血
misery's blood,
困窮の血
and the blood of men tortured in prisons,
そして監獄で拷問される男たちの血
and the blood of children
そして子供たちの血
calmly tortured by their papa and their mama
パパやママたちに穏やかに拷問を受けている
and the blood of men whose heads bleed in padded cells
そして独房で頭から血を流している男たちの血
and the roofers blood
そして屋根職人たちの血も
if the roofer slips and falls from the roof
屋根屋さんったら、もしも屋根から 足を滑らせて 落っこちるんだとするならね
and the blood that comes and flows and gushes with the newborn
そして新生児とともに到来し、流れ、噴き出す血
the mother cries,
母親が叫び
the baby cries,
赤ん坊が泣き喚く
the blood flows
血が流れる
the earth turns
地球はまわる
the earth doesn't stop turning,
地球はまわるのをやめません
the blood doesn't stop flowing
血が流れるのも止みません




where's it going all this spilled blood?
流れたこの血はみんなどこへ行くんだろう?
blood of the blackjacked,
警棒で打たれた血
of the humiliated,
蔑まれし者どもの
of the suicides
自殺せし者どもの
of firing squad victims
銃殺刑に処せられし者どもの
of the condemned
有罪宣告を受けた者どもの
and the blood of those that die
そして、死せる者どもの血
just like that
よくあるような
by accident
偶然の事故で




in the street
通りで
a living being goes by
ひとりの生ける者が歩いていく、
with all his blood inside
その内側には血がたっぷり
suddenly there he is,
突如として、そこにいるその彼が
dead
死んでしまった
and all his blood outside
そして彼の血はすべて外側に
and other living beings make the blood disappear
そして他の生ける者どもが その血を見えないように始末する
they carry the body away
彼らは遺体を運び去る
but it's stubborn blood
けど、それは渋太い血で
and there where the dead one was, much later
そう、その死んだ者がいたそこには、ずっと後になっても
all black
やけに黒々とした
a little blood still stretches
ごく少量の血が いまもなお こびりついている
coagulated blood,
凝固した血
life’s rust, body’s rust
生命の錆、肉体の錆
blood curdled like milk,
ミルクみたいに固まった血
like milk when it turns,
それがまわれば ミルクみたいだ
when it turns like the earth
それがまわると 地球みたいだ
like the earth it turns
地球みたいに それがまわる、
with its milk,
そのミルクと一緒に
with its cows,
その乳牛とともに
with its living,
その生ける者とともに
with its dead,
その死せる者とともに
the earth that turns
まわる地球は
with its trees,
その木々を乗せて
with it's living beings,
その生きとし生ける者たちとともに、
with its houses
その家々とともに
the earth that turns
地球はまわる
with marriages, burials,
婚礼とともに、埋葬とともに
shells,
貝殻みたいに殻をかぶって、
regiments,
軍隊とともに
the earth that turns and turns and turns
まわる地球が、まわって、まわる
with its great streams of blood.
その大いなる血流を得て








Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞 071809









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(うまく日本語にできているかどうかわかりませんけど、)

第二次大戦直後に刊行されて
フランス全土で大ベストセラーになった詩集「ことばたち」の中のこの一編。
おそらくは対独レジスタンスを闘うナチス・ドイツ占領下のフランスで書かれたものだろう。
ヒトの体内を巡る血、その血の循環という命、
その命を支える牛乳という栄養素
そうした個々の生きとし生けるものを乗せて
さらにもっともっと、その他のいろんなものたちをも乗せて
回りつづけ、回りつづけてきた、まわる地球という
この惑星の自転と公転という回転。
それが回転していく中で 
こぼれ出たり、ときにしばしば無理やり流し出されたりする血の その歌が、この詩です。
という、そんなこの詩の詩軸(?)とその全人類史的な傾きが
うっすらと心の瞳に見えてくると
この詩が歌っていることが さらにもっとよく
あなたの心に鳴り響くかもしれませんねーwink


願わくば、その響きとともに震え、共鳴されんことを♪







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【Years Ago−Go!】






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・「ベルリン」 (ルー・リード

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20060517








(2年前のエントリーも Playback♪)






・「年老いていく子供たちへ」 (ジョニ・ミッチェル

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050517

*1:ジャック・プレヴェール(1900-1977)はフランスの国民的な詩人であるとともに、映画「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ監督、1945年)の脚本家としても知られ、また、ジョセフ・コスマの作曲を得たその詩「枯葉」は単にシャンソンのみならず、ジャズのスタンダード・ナンバーとしても不滅の名曲に数えられている。

*2:英訳者のローレンス・ファーリンゲッティ(1919- )は自らもビート派の詩人として名高く、ビートの時代には有力なオーガナイザーとして活躍、1953年に彼が仲間たちとサンフランシスコのコロンバス・アヴェニュに開いた「シティ・ライツ書店」は、その2年後には独立系の出版社としてアレン・ギンズバーグの詩集「吠える、その他の詩」Howl And Other Poems をはじめ、ファーリンゲッティ自身のいまも人気のある詩集「心のコニーアイランド」A Conny Island of the Mind やグレゴリー・コーソの「ガソリン」Gasoline など数多くのビート詩人たちの古典的な名詩集を刊行し、サンフランシスコにおける文学運動の重要な拠点となった。

*3:この詩が収められたプレヴェールの詩集「Paroles」(パロール=ことば)が刊行されたのは1946年のこと、また、この詩集のローレンス・ファーリンゲッティによる英訳版がビート詩人たちの作品で有名なシティライツ書店のポケット・ポエト・シリーズの1冊として最初に刊行されたのは1958年のことでした。

*4:1968年、ロックの創造性が大いなる高まりを見せていた時期にジョーン・バエズが発表したアルバム第9作。「A Journey Through Our Time(わたしたちの時代を行く旅)」という副題がつけられたこのアルバム「Baptism(洗礼)」は、前作の「ジョーン」(1967年)、前々作の「ノエル」(1966年)につづけて、クラシックの作曲家として名高いピーター・シッケルをアレンジャーとして重点的に起用。(このシッケルというヒトは自らが書いた自作の譜面を「P・D・Q・バッハ」という(ヨハン・セバスチャン・バッハのそれまで知られていなかった息子のひとりと思われる作品が発見され、その実在が確認されたという)大掛かりな虚構を仕掛けて登場してきた才知溢れるなかなかのイタズラ者でもあるのだがw、そのシッケルのスコアによるオーケストラの演奏をバックに、われらがジョーン・バエズさまが、ウォルト・ホイットマン、ガルシア・ロルカ、ジェームズ・ジョイスウィリアム・ブレイクジョン・ダン、ユージニー・エフトシェンコ、E・E・カミングス、スティーヴン・スペンダー、アルチュール・ランボーといった世界の高名な詩人たちの作品を朗読し、ときには歌うという全23のトラックが収録されている(なんだかペンギン・ブックスのペーパーバック版の世界の詩人のアンソロジーみたいなアルバムなのですが!)、その中にはケネス・レクスロースの英訳による われらが山部赤人山上憶良柿本人麻呂ら「万葉集」からの歌が(文字通り短い歌として5首ほど)「Poems From The Japanese」というタイトルで朗読されている。