Rush Hour Blues

Words & Music by Raymond Douglas Davies.
(1975年発表)



(原題直訳 「ラッシュアワーのブルース」)





From The Kinks album, "Soap Opera".
名作アルバム度 ☆ 

「ソープ・オペラ(石鹸歌劇)〜連続メロドラマ ”虹色の夢”」 (キンクス




   
歌詞は、次のURLから   
http://hobbes.it.rit.edu/







邦題「ラッシュ・アワー・ブルース」 (キンクス







He gets up early about seven o'clock,
彼は早起きで、だいたい7時頃に起床する
The alarm goes off and
目覚まし時計が鳴り止むと
Then the house starts to rock.
つづいて家の中がバタバタする
In and out of the bathroom by seven-o-three,
トイレがすむのは7時3分
By seven-ten he's downstairs drinking his tea.
7時10分には下に降りて、お茶を飲む
So put a shine on your shoes,
それから靴を磨いて
Put on your pin-striped suit.
ピンストライプのスーツを着込む
Can't lose those early-morning-can't-stop-yawning,
いつものこんな朝早く
どうしてもあくびが止まりゃしないんだ
Push and shoving rush hour blues.
押し合い、へし合い、ラッシュアワーのブルースだ







Wife:
主婦:

Darling are you ready?
「あなた、支度、大丈夫?
You'll be late for the bus!
バスに乗り遅れるわよ」



Star:
主演スター:

Don't rush me baby
「せかさないでくれよ、きみぃ
While I'm using my brush.
まだ、靴を磨いているとこなんだから」



Wife:
主婦:

Get a move on darling
「あなた、もう出ないと
You're cutting it fine.
そろそろギリギリよ」



Star:
主演スター:

Cool it baby
「落ち着けよ、きみぃ
I've got plenty of time.
ぼくには時間はたっぷりあるんだ」








So put a shine on your shoes
こうして靴をピカピカにして
Put on your pin-striped suit.
ピンストライプのスーツを着込んで
Can't lose those early-morning-can't-stop-yawning
どうしたって
いつものこんな朝早く、あくびが止まりゃしないんだ
Push and shoving rush hour blues.
押し合い、へし合い、ラッシュ・アワーのブルースだ




Soon I'll be just one of the commuters
すぐにぼくはただの通勤客のひとりになる
Waiting for the subway train.
地下鉄が来るのを待ち
I'll be rushing up the stairs
急ぎ足で階段を上がり
And in the elevator.
そしてエレベーターに乗り
By the time that I get there
着いた頃には
I'm gonna feel like a mole in the ground
ぼくは地上に出たモグラみたいな気分になるのさ
I'll be caught in the crush
押し潰されてしまいそう
I'll be pushed and be shoved,
押し込まれては、押し出され
And I'll be trying to get the subway train.
そして、ぼくは地下鉄に乗り込もうとする
I'll be fighting with my brief case and my umbrella,
カバンと傘で戦って
Every morning and every night.
毎朝、そして毎晩だ
Some people do it every day of their lives.
一生の間、毎日ずっとそうする人たちもいる







Wife:
主婦:

Read the paper later
「新聞はあとになさいよ
You'll be caught in the queues.
どうせ行列になるんだから」



Star:
主演スター:

Don't rush me baby
「せかさないでくれよ、きみぃ
While I'm reading the news.
ぼくは新聞を読んでるとこじゃないか」



Wife:
主婦:

Darling get a move on
「あなた、もう出かけないと
You're cutting it fine.
そろそろ危ないわよ」



Star:
主演スター:

Cool it baby
「静かにしてくれよ、きみぃ
I've got plenty of time.
ぼくは時間ならたっぷりあるんだから」







A quick cup of coffee and a slice of toast
せかせかとコーヒー飲んで、トーストひときれほおばって
And the Star (or should we say, Norman?)
そして主演スターは(というか、ノーマンは、とわれわれは言うべきか)
Is off to do battle with the rush hour queues and traffic jams.
ラッシュアワーの列と交通渋滞の戦いへと出かけ行く




In the rush hour queues
ラッシュアワーの列の中では
No one gives a damn.
誰ひとりとして目もくれない
No one knows where I'm going to
誰もぼくがどこに行くのか知りもしない
No one knows who I am.
ぼくが何者なのか誰も知らない




I'm sitting in my office
ぼくは職場にすわっている
In the metropolis
この大都市では
I'm just part of the scenery,
ぼくは単なる風景の一部
I'm just part of the machinery.
ぼくは単なる装置の一端
Chained to my desk on the 22nd floor,
22階の自分のデスクに繋ぎとめられ
I can't break out through the automatic door,
ぼくはあの自動ドアの向こうへ出て行くことはできないのだ
I'd jump out the window but I can't face the drop
窓から飛び降りようにも、ぼくには落ちてくなんてとても無理
I'm sitting in a cage with an eye on the clock.
時計に目をやり、檻の中にすわっている




I'm ready to start paying my dues,
ぼくは心を決めて自分の務めにとりかかる
I've got to lose those early-morning-can't-stop-yawning,
いつものこんな朝早く
どうしてもあくびが止まりゃしないんだ
なんて言ってる場合じゃないんだぞ
Push and shoving, rush hour blues.
押し合い、へし合い
ラッシュアワーのブルースどころじゃ、もうないぞ




Well I'm ready to start paying my dues,
よーし、準備はいいぞ、ぼくは自分の仕事にとりかかる
I've got to lose those early-morning can't-stop-yawning,
いつものこんな朝早く、どうしてもあくびが止まりゃしないんだ
なんて言ってる場合じゃもうないぞ
Push and shoving rush hour blues.
押し合い、へし合い
ラッシュアワーのブルースはもうおしまい









Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






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ここで重要なのは、ノーマンが他人であるということだ
主演スター氏は、他者であるノーマン氏になり替わっている
ラッシュアワーの地下鉄も大都会のオフィス勤めも、
(ノーマンにとってはまったくの)他者である主演スター氏によって初めて体験されている
そして、それはスター氏にとっては実に驚き呆れることばかり



だから、そこを見落としてはならないというのが実に巧妙なところだろう。
他人であるということが重要であり、巧妙だ。

人は自分の仕事に対してもっと厳かな気持ちを持つものかもしれない
しかし、この人物、主人公はノーマン本人ではない。


逆に言えば、自分ではなく一個の他人として人が自分の日常を送るとき/送っているとき
人はスター氏のようになるのかもしれない、
ありきたりの陳腐な言い方をすれば、こんな自分は自分じゃないとか、自分らしくない、とかそんな言い草に連なることになる。

(そう、誰もがスターなのだからwink

そして、この主演スター氏はノーマンではないのだ。


だが、人はどこにいても、どんな状況や境遇にあっても、
自分となるべく、努めることができる(なるべく、であるw)
そう努めるところに、自分らしさ、自分流儀というのが出てくるのだ
そこから自分が生まれてくる、
(その意味で自分というのは若い魂にとっては未知なる他者であるのかもしれない)
それなしに人は誰でもない、
それこそ No man である、No one 、Nobody である*1

いや、そうしなければ誰も自分にはなれない、
自分とは「何か」ではなく、「どうするか」How である。
どうするか、どうしたのか、それが自分になっていく。
自分とは探すものではなく、(そこで/その場で)見い出し、なるものである
(というのが「自己実現」の(おそらくは)(俗化し商業化される以前の)本来の発想だったのだろう)

人間というのは、ちょうど青い鳥のように青い人なのだ、(a blues man ブルースマンというのは、わたしのギャグだが(笑))

そして、きょうのこの歌は「ラッシュアワー・ブルース」だ。


いずれにせよ、これはまだほんのはじまり、
ノーマンの一日はまだまだこれからなのである・・・・

(きょうの日は、明日へとつづく)

*1:ジョン・レノンなら 「Nowhere Man」というだろう http//d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050218