Rock 'N' Roll Suicide

Words & Music by David Bowie.
(1972年発表)



(原題直訳 「ロックンロール自殺」)



From David Bowie album,
"The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders And From Mars".

名作アルバム度 ☆☆☆☆☆

「ジギー・スターダスト」 (デイヴィッド・ボウイ)





歌詞は、次のURLから
http://www.suicidalwhirlpools.com/songs/DB_Rock_Roll_Suicide.htm




名曲度 ☆☆☆




邦題 「ロックンロールの自殺者」 (デヴィッド・ボウイ








Time takes a cigarette,
時が煙草に手を伸ばし
Puts it in your mouth
それをおまえの口に置いていく
You pull on your finger,
おまえは指を一本
Then another finger,
そしてまた一本
Then your cigarette
そうやってやっと一服する
The wall-to-wall is calling,
壁から壁へとギッシリになった会場が呼んでいる
It lingers,
その響きが聞こえてくる
Then you forget
そして、おまえは忘れるのだ *1
Ohhh, you're a rock 'n' roll suicide
おゝゝ
おまえのはロックンロールという自殺なんだな




You're too old to lose it,
おまえは
失ってしまうには齢をとりすぎ
Too young to choose it
選ぶのには若すぎる
And the clock waits so patiently on your song
そして、時間はとても辛抱強くおまえの歌を待っている
You walk past a cafe
おまえはカフェを通り過ぎるが
But you don't eat when you've lived too long
しかし、あまりに長く生きすぎてしまったおまえは
食べることをしない
Oh, no, no, no,
おゝ、ダメだよ、
ダメだ、いけないよ
You're a rock 'n' roll suicide
おまえのそれはロックンロールという自殺だぜ




Chev brakes are snarling
シヴォレーのブレーキ音が軋む
As you stumble across the road
おまえがよろよろと道路を渡ろうとしたからだ
But the day breaks instead
だけど、おかまいなしに夜は明ける
So you hurry home
そうやって、おまえ家路を急ぐ
Don't let the sun blast your shadow
太陽におまえの影を責めたてさせることはない
Don't let the milk float ride your mind
牛乳配達のクルマに気をとられたりしちゃダメだ
They're so natural
それはごくごく自然なこと
Religiously unkind
宗教的なまでに非情なことだ
Oh no love!  
あゝ、違うよ、愛するきみよ!
You're not alone
おまえはひとりなんかじゃない




You're watching yourself
おまえは自分のことを見張っている
But you're too unfair
でも、きみはとってもずるいじゃないか
You got your head all tangled up
自分の頭の中をすっかりもつれさせてしまっている
But if I could only make you care
だけど、もし、このぼくが
おまえに気づかせることができさえしたら
Oh no love!
おゝ、違うんだ、愛するきみよ!
You're not alone
きみはひとりぼっちなんかじゃない
No matter what or who you've been
おまえが何者だろうと、何者であったにしろ
No matter when or where you've seen
いつごろ、どこにいたにしてもだ
All the knives seem to lacerate your brain
ナイフはすべておまえの脳髄を切り裂くものであるようだ
I've had my share,
ぼくの手には自分の分がある
I'll help you with the pain
ぼくはこの痛みできみの力になってやるよ
You're not alone
きみたちはひとりぼっちじゃないんだ




Just turn on with me
とにかくぼくと一緒にその気になってごらん*2
And you're not alone
そうすれば、きみはひとりじゃない
Let's turn on with me
さあ、ぼくと一緒にその気になろう
And you're not alone
そうすれば、きみはひとりじゃないんだ
(wonderful)
(すばらしい)
Let's turn on and be not alone
その気になろうぜ、そして、ひとりっきりじゃなくなろう
(wonderful)
(すばらしい)
Gimme your hands
きみのその手を貸してくれ
'cos you're wonderful
だって、きみはすばらしいじゃないか
(wonderful)
(すばらしい)
Gimme your hands
きみたちのその手をぼくに貸してくれ
'cos you're wonderful
だって、きみらはすばらしいじゃないか
(wonderful)
(すばらしい)
Oh gimme your hands
あゝ、ぼくにおまえのその手を貸してくれ






Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






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ということで、物語が終わり、場内の照明がいっせいに明るくなるようなエンディングだ。
まるで虚構のジギー・スターダストというペルソナと現実のデイヴィッド・ボウイというパフォーマー二重写しになっているかのような光景が脳裡に浮かぶ。
そして、そこには会場を埋め尽くしたぼくらもいるにちがいない。

だが、これは(こうして日を追って聴きつづけて来たジギー・スターダストという捏造された救世主の物語の大団円と言えるだろうか?
救済の物語は、もはや虚構の内にではなく、現実のコンサートホールの中にある。
物語の主人公は、いまや年老い、道路をわたるのも覚束ないさまにも見受けられる。
虚構の物語は、ただ残された時間の中でおのれを摩滅していく主人公の、そんなアンチクライマックスな終局として示される。
いや、時間という観点に照らして見れば、この歌のはじまりは何度となく繰り返されてきたはずだ。






(旧稿)
そして、この歌は(もはや)物語の主人公「ジギー・スターダスト」としてよりも、その彼を演じる「デイヴィッド・ボウイ」というひとりのパフォーマーとしてのその姿勢がより強く示されているようにも聴こえてくる。つまり虚実の境界がもはや失われて入り混じり、夢が引き潮のように遠のき、薄れ、そこに現実がせり出してくる・・・。
だから、照明も舞台上に虚構を創出する演劇的な効果としてのそれではなく、いつしかライヴ・ステージのそれとなっていく・・・、そんな演出をここで勝手にほどこしてみるとしようか。
そして歌われる「きみはひとりじゃない」「一緒にその気になってみよう」「ぼくにきみのその手を貸してくれ」というメッセージが向けられるその「きみ」は(おそらくは複数形で歌われる「きみたち」という)(すなわち、わたしたち)聴衆なのだろう。



(この歌「ロックンロールの自殺者」は)
飛び降り自殺やガス自殺と同じようにロックンロールもまた自殺行為であるという、そんな認識から生まれた歌なのだろう。
極限まで無理をして全速力で突っ走り、かつまた精一杯、突っ張ってみせる、しかし、その裏にはとんでもないまでの自己の摩滅行為がある、つまり自分を磨り減らしていくこと、その磨り減らす、あるいは自分を削り、殺いでいく、その摩擦音がロックであるなら、明らかにそれは自殺行為と言えるだろう。少なくともそれは(結果的に)自己破壊ということになるのだから、ロックンロールをパフォームすることは、人によっては一種の自殺行為になってしまうのかもしれない。
あのジェームズ・ディーン以来、ときにそれは事故の様相を示しながら、少なからぬ数の名のある若い生命がそのようにしてロックンロール自殺を遂げてきた・・・・、ブライアン・ジョーンズジム・モリスンジャニス・ジョプリンジミ・ヘンドリックスマーク・ボランキース・ムーン、カート・コバイン・・・・、あえて思い出すという作業をせずに思い浮かんでくる名前は、ざっと(イズ)こんなところか・・・・いやいや、まだまだ封印を破って申告者はあとを絶たないはずだ。
もちろん、これは、いささかロマンチックにすぎる見方かもしれない・・・・*3





ということで、この物語の最終的なメッセージ(ダイイング・メッセージ?)は、「You Are Not Alone」(きみはひとりじゃない)と、「Give Me Your Hands」というものになった。*4



ところで、この全訳をはじめたのは、こちらの時間的な都合で毎日(きょうの晩御飯は何にしよう? といちいち、おかあさんたちみたいなことを考えている)時間がとれなくなってしまったためで、(いっそのこと)コース・メニューにしたほうが(ある意味)楽だろうという、そういう理由から、この「ジギー・スターダスト」をわたしのこのページで11日がかりで上演してきたわけだが、偶然というのは面白いもので、ちょうど(これをはじめる)7月の8日、9日、10日の3日間にわたってニューヨークの「エンディコット・パフォーミング・アーツ・センター」The Endicott Performing Arts Center というところで(パトリック・フォティという人の演出による)この「ジギー・スターダスト」のロック・オペラ版が初演されていたことをきょう知った。
こういう偶然は何だか嬉しいですね、
(それこそ「Something Celebration Is Goin' On」って感じで)、知ってれば、花束のデカめのをあちらのホールにでも送ったんですけどねえ(ってwink)。

まさしく、We are not alone でしたね




http://www.pressconnects.com/entertainment/stories/070705s176507.shtml (舞台の記事)

http://www.endicottarts.com/  (劇団のページ)





(追記)
で、きょう、あらためてこの歌を聴いてみて、わたしの耳に聴こえてきたのが、
ローリングストーンズのあの歌「イッツ・オンリー・ロックンロール」It's Only Rock'n'Roll But I Like It でした。
よければ、どうぞ、ご一緒に聴いてみませんか?


・「イッツ・オンリー・ロックンロール」It's Only Rock'n'Roll (But I Like It)
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050315

*1:「forget」という単語には(何かを)「get」するために「忘れる」というようなところがあるのだろうかw、この「忘れる」は「断ち切る」といった意味合いであるようです。

*2:「turn on」というのは幻覚剤などクスリで陶然とすることを言いますんで、そのことこだわってもらって、このくだりを聴いてもらってもかまいません。

*3:以前にも言ったが、(わたしの言う)ロマンチックとは「ロマン」的、すなわち「物語」的ということだ。

*4:これは(わたしに)スティーヴン・スピルバーグの映画「未知との遭遇」を思い出させる。UFOと4つの音階でコミュニケートする、あの映画のキャッチコピーであり、また主要なメッセージでもあったのが(宇宙には人類だけじゃない、という意味の)「We Are Not Alone」というフレーズだった。そして「Give Me Your Hands」についても、同じくスピルバーグ監督の映画「ET」のあの地球外生命体(ET)の指先と人間の指先が触れ合うあの印象的な有名なポスターの画像が目に浮かぶ。それまでは、ひたすら「恐るべき未知なる外部(=宇宙)からの侵略者」として撃退の対象であった宇宙人が、いつしかコミュニケートすべき異生物(他者)と認識されるようになる。明らかにこれは「共生」というかたちでの人類の意識の進化を物語っていることになるわけだが、人類は(おそらく)(宇宙人よりも)はるかにすれっからしでタフで強いのではないだろうか。だとしたら、わたしたちは、その果たすべき責任に(いつまでも)気づかぬふりはしていられないことだろう。とはいえ、この島の人々はたかだか中国とか韓国=北朝鮮といった程度の「外部」にすらどぎまぎしてすぐに精神の動揺をあらわにして取り乱してしまうていたらくの、その程度の意識レベルを露呈しているのだから、あんまり大それたことは期待できない。