See The Sky About To Rain


Words & Music by Neil Young.
(1974年発表)



(原題直訳 「雨の降りそうな空を見ろ」)



From Neil Young album, "On The Beach".
名作アルバム度 ☆☆

渚にて*1 (ニール・ヤング




歌詞は、次のURLから
http://www.azlyrics.com/lyrics/neilyoung/seetheskyabouttorain.html


名曲度 ☆




邦題 「アバウト・トゥ・レイン」 (ニール・ヤング






See the sky about to rain,
雨の降りそうな空を見てごらん
Broken clouds and rain.
砕けた雲と、そして雨
Locomotive, pull the train,
列車を引っ張っていく機関車
Whistle blowing through my brain.
ぼくの頭の中で汽笛が鳴り響く
Signals curling on an open plain,
むき出しの平原にはいくつもの信号機が渦巻いて
Rolling down the track again.
さらに線路を驀進していく
See the sky about to rain.
雨の降りそうな空を見てごらん




Some are bound for happiness,
幸せ行きの人もいれば
Some are bound to glory
栄光行きの人もいる
Some are bound to live with less,
倹しい暮らしに行き着く人もいる
Who can tell your story?
おまえの物語が
誰に語れるというのかい?





See the sky about to rain,
雨の降りそうな空を見てごらん
Broken clouds and rain.
砕けた雲と、そして雨
Locomotive, pull the train,
列車を引っ張っていく機関車
Whistle blowing through my brain.
ぼくの頭の中で鳴り響く汽笛
Signals curling on an open plain,
むき出しの平原には渦巻くいくつもの信号機
Rolling down the track again.
さらにまた線路を驀進していく
See the sky about to rain.
雨の降りそうな空を見てごらん




I was down in Dixie Land,
ぼくはディキシーの国*2へ行って
Played a silver fiddle
銀のフィドルを弾いた
Played it loud
大きな音で弾いてたら、
And then the man broke it down the middle.
そしたらある男にそいつを真っ二つにブッ壊されたぜ
See the sky about to rain.
雨が降りそうな空を見てごらん






Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮






なにも、この歌に限ったことではないのだが、ポピュラー・ソングの大きな愉しみのひとつに韻に注目(注耳?)してみることがある。
日本ではけっこう見過ごされてしまっているが、口ずさむのも楽しくなるような韻はポップ・ソングの愛すべき大きな要素のひとつだろう。
ほら、見てごらん(聴いてごらん!)、この歌も、
・・・ rain ・・・ train ・・・ brain ・・・ plain ・・・,そして、again 、rain と回帰する。
さらに、次のスタンザでは、happiness と less が、 glory と story と交錯し、
それはまた Dixie Land と loud が、 fiddle と middle と交錯すべく音韻的な展開として、しっかりと構成されている。
日本のリスナーは(もうひとつ)こういうところを身体の奥のハートで(あくまでも「音」としてだけでいいから)受け止めてみるといいのではないだろうか・・・、きっとそれはより豊かな音楽の体験にあなたを導くことになるだろう。
そんなふうにして(ほら、もう一度)この「雨の降りそうな空を見てごらん」。





(ちょっと(書くのが面倒くさくて苦痛だが)ニール・ヤングの物語(のかけらなど)を・・・)



かつてのバッファロースプリングフィールド時代の盟友スティーヴン・スティルスの誘いで、(コーラスとかハーモニーなんかどう転んだってつけられそうにないあのニール・ヤングが)あの絶妙のハーモニーを聴かせるクロスビー・スティルス&ナッシュに参加して、(さらに「超」の字が1個増えたような超の4乗級の)スーパーグループ「クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング」としてアルバム「デジャヴュー」やライヴ・アルバム「4ウェーストリート」(にそのすばらしさのごく一部がうかがえる)のツアー・ステージで超絶的な人気を博した1970年代初めのニール・ヤングさん、そうしたCSN&Yでのキャリアと平行して彼が発表した自身の3枚目のソロアルバムの「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」や、自身の新旧の歌をアコースティック・ギター1本とハーモニカだけで歌う新鮮な響きに溢れるソロ・ツアー、さらにその間、オハイオ州立大学で起きた州兵による学生デモの鎮圧で4名の学生が射殺されたことを広く報じる「♪ブリキの兵隊どもとニクソンがやって来て・・・」と歌ったトピカル・ソング「オハイオ」を書いて、CSN&Yのシングル盤として発表するなど・・・・・そして(やがて)多忙の中から(世間的には彼の最大の傑作とされる)名作アルバム「ハーヴェスト」の発表・・・などこの時期のニール・ヤングが(人気はもちろん)その創造性のピークにあったことは誰もが認めることだろう。言うまでもなく、ロックにおける創造性とは(ある種)若さという自然の(それゆえに天賦の)力による(ある意味で)盲目的な創造性である。そうした創造性(くりえちびちい(笑い))のピークという意味なのだが、近年のニール・ヤングの活動は(そうしたものとは)また異なる創造性に衝き動かされたものなのは一聴明らかであるだろう。



(そして、本題のこの歌の話になるが・・・・)



そして、名作「ハーヴェスト」以降、(それまでの各時期の彼のライヴを中心とした)ドキュメンタリー映画*3サウンドトラック・アルバム「過去への旅路」Journey through The Past はあったものの、スタジオ録音の正規のアルバムはしばらくの間、その発表が途絶えてしまう(その間、周囲の身近な人間が何人かドラッグで死んだり、自身も中毒性のあるドラッグで苦しむなどしていたようだが)、(ようやく、なのか、ブランクを置いて制作した)(のちに)「今宵、その夜」Tonight's The Night (として発表されることになる)は、その陰鬱な内容のせいからかレコード会社から発売を拒否され、そのかわりにいくらか穏便な内容の歌を集めた*4アルバム「渚にて」On The Beach を発表、しかし、それまでのニールのアルバムに馴染んできたファンには、それは期待外れの落胆するような作品として受け取られ(実際、そのようにしか聴こえることなく)、ジャーナリズムの間での評価もまるで芳しいものはなかったのだが、近年のニールの仕事ぶりもあってか、年々このアルバムを再評価する声は高くなっているようだ。




Locomotive, pull the train,
Whistle blowing through my brain.
Signals curling on an open plain,
Rolling down the track again.
See the sky about to rain.


客車を引っ張っていく機関車
ぼくの頭の中に鳴り響く汽笛
むき出しの平原にはいくつもの信号機が渦巻いて
さらに線路を驀進していく
雨の降りそうな空を見てごらん




・・・・ここに当時のニール・ヤングが聴こえてこないか? スーパースターダム、カルチャー・ヒーロー、世代の代弁者、こうしたことの耐え難いプレッシャー・・・・・・



聴衆たちよりもエネルギッシュでパワフルな「機関車」として(その作品やステージで)「客車」を何両も引っ張って進んで行く。自分の頭の中にはすでに警笛が鳴り響いている。そして道行く剥き出しの平原には、いくつもの信号が渦巻いている。だが、進んでいかねばならない、レールの上を。・・・・そう、そこにはレールは敷かれているのだ、聴衆が求め、ジャーナリズムが求め、また、レコード会社が求める進路へと線路が引かれている・・・・。





Some are bound for happiness,
Some are bound to glory
Some are bound to live with less,
Who can tell your story?


幸せ行きの人もいれば
栄光行きの人もいる
倹しい暮らしに行き着く人もいる
おまえの物語が、誰に語れるというのだ?




●これまでここで紹介したニール・ヤングの作品

「テル・ミー・ホワイ」 (ニール・ヤング

http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050202

*1:どうでもいいことかもしれないがアルバム・ジャケットの砂浜から覗くアメ車のテールを見落とすなかれ。

*2:アメリカの南部諸州

*3:ニール・ヤング自身が「バーナード・シェイキー」という名前で監督もしているいわばプライヴェート・ムーヴィーというべき作品

*4:それでもチャーリー・マンソンを歌った「レヴォリューション・ブルース」なども入っている