I've Gotta Get A Message To You



Words & Music by Barry Gibb, Robin Gibb and Maurice Gibb.
(1968年発表)




(原題直訳 「ぼくにはきみへの伝言があるんだ」)



Performed by The Bee Gees
You can listen to The Bee Gees album, "Idea"
名作アルバム度 ☆☆

「アイディア」 (ビージーズ



Also various their compilations.



歌詞は、次のURLから
http://8eatles.com/bee/song.dir/iggmy.html



名曲度 ☆☆



邦題 「獄中の手紙」 (ビージーズ








The preacher talked to me and he smiled,
教戒師は、ぼくに語りかけると微笑んで
Said, "Come and walk with me, come and walk one more mile.
こう言った
「さあ、わたしと一緒に行きましょう
いらっしゃい、あと1マイルほど歩きましょう」と
Now for once in your life you're alone,
さあ、このときばかりはあなたは生涯においてひとりきりなのです
But you ain't got a dime, there's no time for the phone."
小銭はお持ちでないでしょうが、電話をしてる時間はありませんよ」




I've just got to get a message to you, hold on, hold on.
ぼくにはきみに伝えておきたいことがあるんだ
待ってくれ、待ってくれよ
One more hour and my life will be through, hold on, hold on.
あと1時間だけ、それでぼくの命もおしまいになるんだ、
待ってくれ、待ってくれ




I told him I'm in no hurry,
ぼくはべつに急いでるわけじゃない
But if I broke her heart, won't you tell her I'm sorry.
だけど、もし、ぼくが彼女の胸を張り裂いてしまうのだったら
すまなかったと彼女に伝えてくれないか
と彼に言った
And for once in my life I'm alone,
そして今度ばかりは
ぼくはひとりきりなのだ
And I've got to let her know just in time before I go.
だけど、そのまえに
ぼくはしっかりと彼女に知ってもらいたいのです




I've just go to get a message to you, hold on, hold on.
ぼくには彼女に伝えておきたいことがあるんだ
待ってくれ、待ってくれよ
One more hour and my life will be through, hold on, hold on.
あと1時間、そうしたら、ぼくの命はおしまいになる
待ってくれ、待ってくれよ




Well I laughed but that didn't hurt,
あゝ、ぼくは笑ったけれど、
でも困っているわけじゃない
And it's only her love that keeps me wearing this dirt.
この汚辱に耐えられたのも彼女の愛があるからなんだ
Now I'm crying but deep down inside,
いま、ぼくは叫んでるんだ、
だけど、ずっと心の奥底でね
Well I did it to him, now it's my turn to die.
そうさ、ぼくはこれをあの男にしたんだ
いま、それがぼくが死ぬ番になって廻ってきたんだ




I've just got to get a message to you, hold on, hold on.
ぼくにはきみに伝えておきたいことがあるんだ
待ってくれ、待ってくれ
One more hour and my life will be through, hold on, hold on.
あと1時間だけ、それでぼくの命もおしまいになるんだ





Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞






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もちろん、この歌はフィクションである。


後半部分にこの歌の主人公の興味深い頭の働きが見られる、それは・・・・




Well I did it to him, now it's my turn to die.
そうさ、ぼくはこれをあの男にしたんだ
それが、いま、ぼくが死ぬ番になって廻ってきたんだ



死刑囚が自分の犯した罪と自分がいまから受けようとする罰を比較対照してみせている。
殺人という罪と、死刑という罰・・・・、


刑罰というものは必ずしも全面的に報復ばかりを意図したものではないだろうが、
見かけ上は、多分に報復といった意味合いが強いように思われる。
社会という共同体の「許さない」という意志を反映して、「国家」がその(「許さない」という)意志を貫徹し実行する。
それが刑罰であり、また死刑だろう。


報復の論理というのは、数式にすれば、



 1 + 1 = 0


ということだ*1


つまり、 1+1がチャラになる、あるいは、それをもってチャラにしようというそういう理屈だろう。

かりに「死刑」という刑罰が、そういう感情から広く社会的に支持されているとしても、
もちろんチャラにならない哀惜なり無念なり憎悪なりの感情は(そんなドンブリ勘定の剰余として)けっして折り合いのつかぬまま残存しくすぶりつづけることになるはずだ。
そして、実際の帳簿上は、あくまでも 1 + 1 = 2 であって、天の視座から見るまでもなく、現実は「1+1」というかたちで(すなわち「+1」というかたちで)「死」が(そして/あるいは「苦しみ」が)もうひとつ加えられることになる。

よりリアルに表記するなら、それは失われるものであるから、


 (−1)+(−1)=−2≠0


となるわけだが、これを一般的に公式化すれば、

個人的にも社会=共同体的にも「負」の値を持った行為*2である「罪」業 α と(そこに加えられる)(「正」の値を持った)「罰」 β のバランスがとれていなくてはならないのだから、各々の絶対値計算は、


−α + β = 0  となるには、 β=α でなければならず、

α=β の相応のバランスが示される。



しかし、わが国の「法務省矯正局」という刑罰担当機関の名称にもあるように(そのβには)積極的な「正」の値を持った矯正プログラム、つまり共同体の「主体」(=主権者)としての再教育プログラムを含むものとなっていなければならないはずだ*3。したがって(厳密には)β=b+cであって(b=刑罰、c=矯正プログラム)、α=βではなく、α≠β なのだ。
そして唯一、「死刑」という刑罰のみが(矯正のためのプログラムを必要としない)α=βな刑罰としてある。


ところで、この「死刑」における α=β、 すなわち、α + β = 0 を見るならば、
日本の例において「死刑」がその罰として定められている罪をまず見ていくことをしなければなるまい。

まず一般刑法では、


・刑法第77条 (内乱罪*4

・刑法第81条 (外患誘致罪*5

・刑法第82条 (外患援助罪)*6

・刑法第108条 (現住建造物等放火)*7

・刑法第117条 (激発物破裂)*8

・刑法第119条 (現住建造物等浸害)*9

・刑法第126条 (汽車転覆等及び同致死)*10

・刑法第127条 (往来危険による汽車転覆等)*11

・刑法第146条 (水道毒物等混入及び同致死)*12

・刑法第199条 (殺人罪*13

・刑法第240条 (強盗致死傷罪)*14

・刑法第241条 (強盗強姦及び同致死罪)*15



以上の例に「死刑」が定められているが、死刑判決の多くが最後の3つに集中していることは言うまでもないだろう。
さらにわたしたちのこの国の社会という共同体は、「死刑」を定めた以下の特別法によってもまた守られている・・・・



爆発物取締罰則 *16

・航空の危険を生じさせる行為の処罰に関する法律 *17

・人質による強要行為等の処罰に関する法律 *18

決闘罪ニ関スル件 *19



わたし個人の考えでは、「死刑」制度というのは「殺すゾ!」「許さないゾ!」というえらく凶暴な恫喝として意識される。
そして、そういう威嚇はひじょうに不愉快きわまりないものとして意識される。
そう、「死刑」制度とは(わたしには)たいへん不愉快なものなのだ。
しかし、その「殺すゾ」「許さんゾ」という不快な声によーく耳を傾けてみるならば、そこにこのわたし自身の声が混じっているのを聞きわけずにいることは不可能だ。
すなわち、わたしたちが日常生活のあらゆる局面でつぶやく「許さない!」「殺すゾ!」というその(小さな正義の)声が(世の中で)増幅されて「死刑」制度に結実して(わたしたちの共同体のさまざまな法となって)このわたし自身の耳に威嚇と警告の声を響かせているのだ。
いずれにせよ、ごくあたりまえに暮らしている分にはまるで聞こえてくることも見えてくることも(それ以前に意識されることも)ないのだが、ある領域に足や頭を突っ込むと、この「殺すゾ」と「許さんゾ」という声がこだまするような仕掛けにこの社会はなっているのだ。

「殺すゾ!」とは、なかなかたいそうな威嚇ではないか。*20

(しかし、実質的にわたしたちの誰もがこの言葉を胸に(ときには口にするなどして)、同時に同じ恫喝の言葉を耳にしながらこの国のこの社会に生きているのだ。)



ところで、

きょう紹介しているビージーズのこの歌「獄中の手紙」がイギリス国内でヒットチャートのナンバー1になったのは1968年9月のことだったが、このときすでにイギリスでは(1965年の議会で)「向こう5年間、死刑の執行を停止する」という法律が通り、実質的に死刑は廃止されていた*21
また、当時のイギリス政府はこの「1965年法」を期限切れにはしないという意向を表明して、翌1969年12月にはその政府決定が議会で可決され*22、「殺人罪」に対する死刑が全廃された*23



もっとも、イギリスがそうなるまでには1800年代からの160年に及ぶ長い段階があって、
19世紀のはじめのイギリスには200以上の罪状について「死刑」が定められていた。
まず、1808年に「すり」と「万引き」(shoplifting)に対する死刑が廃止され(たというから笑ってしまいそうになるのだが事実である)、その後、20世紀に入って、1957年に(いくつかの例外を設けて*24)条件つきでいわゆる「殺人」に対する死刑を廃止した。これが「殺人法」である。そして1965年になって(前述のとおり)いっさいの「殺人罪」に対する死刑の執行を廃止した。

以前もここで触れたが、この時代のイギリス社会は同性愛の合法化など「許容社会」という言葉で称された寛容な時代だった。

*1:刑罰ということで言えば、 α + β = 0 、 α (罪)、 β (罰)

*2:思念や理念や想念や妄念などは現実的な「値」をいまだ持たないものとする。つまりモラルという内面は法に触れることはなく、また法は触れるべきでないというのがわたしの考え。

*3:まず何よりも「筋」として。そして「職業訓練」だの(わたしは不要と思うが)「道徳」や「倫理」教育はあくまでもその「筋」をもとに具体化されたものであるべきと思う。監獄が犯罪者の再生工場であるような現状の修復は、監獄を社会から隔離したかたちで考えるかぎりは、それは無理不可能なことだろう

*4:国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をしたものは、内乱の罪とし、(中略)首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。(以下略)

*5:外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

*6:日本国に対して外国からの武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期もしくは二年以上の懲役に処する。

*7:放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期もしくは五年以上の懲役に処する。

*8:火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。

*9:出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、又は鉱坑を浸害した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。・・・「治水」という言葉があるが、「水」もまた「火」に比して遜色のない危険を到来しうるものだ。

*10:1.現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。2.現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。3.前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

*11:第百二十五条の罪(線路や信号を壊したりして事故の原因を作るなど)を犯し、よって汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による(126条と同じ扱いにするゾ)。

*12:水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、二年以上の有期懲役に処する。よって人を死亡させた者は、死刑又は無期もしくは五年以上の懲役に処する。

*13:人を殺した者は、死刑又は無期もしくは三年以上の懲役に処する。・・・当然のことながら、法の条文には「殺すな」「殺してはいけない」とは記されていない。法は道徳、倫理など人の内面には触れるべきでない。

*14:強盗が、人を負傷させたときは無期又は七年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

*15:強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。・・・・死んでしまえば「強盗致死」や「殺人」と同じなのだが・・・・

*16:これは、まだ日本に「憲法」も「内閣制度」も「国会」もなかった明治初期の時代(1884年)にときの最高権力機関である「太政官府」によって「太政官布告」として(つまり「お触れ」として)発令されたもので、当時は自由民権運動過激派による続発した爆弾闘争に対して出されたもの。したがって「法律」ではなく、あくまでも「罰則」であり、これが明治憲法制定後も現行憲法制定後も効力のある「お触れ」として今日まで生き延びているという驚くべき現実。かりに外国勢力による爆弾テロがあった場合は、わたしたちはこの明治時代の「太政官」命令によって、テロリストを起訴することになる。・・・第一条 治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス(以下略)

*17:1.航行中の航空機(そのすべての乗降口が乗機の後に閉ざされたときからこれらの乗降口のうちいずれかが降機のため開かれるときまでの間の航空機をいう。以下同じ。)を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、または破壊した者は、無期または三年以上の懲役に処する。2.前条の罪を犯し、よって航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、または破壊した者についても、前項と同様とする。3.前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑または無期若しくは七年以上の懲役に処する。

*18:第二条 (加重人質強要)二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕し、又は監禁した者が、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは無期又は五年以上の懲役に処する。第三条  航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)第一項一号の罪を犯した者が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求したときは無期又は十年以上の懲役に処する。第四条(人質殺害)第二条又は前条の罪を犯した者が、人質にされている者を殺したときは、死刑又は無期懲役に処する。2前項の未遂罪は、罰する。

*19:第三条 (決闘殺傷)決闘ニ依テ人ヲ殺傷シタル者ハ刑法ノ各本条ニ照シテ処断ス・・・・わたし個人の考えだが、「決闘」を新たに制度化して(「裁判員」のように「立会人」制度を設けて)(ある程度のルールを決めて)公認すれば、「殺人」はいくらかでも減るのではないか。よく「死刑」のことを「国家による殺人」という言い方をするが、多くの「殺人」が(「あの野郎、絶対に許せねえ」など)「民間による処刑」であるとき、国家は「逮捕・監禁」の権利を独占するように「処刑」の権利もまた「国家」が独占していることの意識がきわめて希薄であることに留意したい。通常の殺人において、それなりの理由のある殺人は(「致死」によるものも含めて)「民間による処刑」の性格を色濃くしながらも、多くの場合、量刑において「情状」酌量の対象となっている。よって「民間による処刑」を実質的にある程度、法廷の場で(無自覚ながらも)容認する(かたちをとる)のであれば、(いっそのこと)「決闘」を公認することも考慮の余地があるんではないかと、どっかの知事もビックリなDQNな発言をあえてしておこうか。TV中継とかがありになれば、当日以前からワイドショー的に背景説明があったり、過去のいきさつの再現ドラマがあったり、延々ひっぱってK1どころの視聴率じゃなくなるだろう。それは「民主」的ならぬ「自主」的な公開処刑ということになるだろうか。ってこれはもうイケナイあぶない冗談の域のお話になってますねん、

*20:きょうの歌のタイトルではないが、「I've Gotta Get A Message For Me」といったところか。人から「てめえ、殺すゾ」などと言われながら暮らすのはきわめて不愉快なことである。

*21:連合王国のうちイングランド、スコットラン、ウェールズで適用、北アイルランドについては1973年になって実施された

*22:賛成343対185反対

*23:さらに1998年には叛乱罪や海賊行為に対する死刑や軍法会議における死刑も撤廃された

*24:銃器や爆発物を用いた殺人、別個の事件で2人以上を殺害した場合、逃走中に逮捕を免れようとして犯した殺人、窃盗の成り行きで犯した殺人、警官、刑務官に対する殺人、逃走中に逮捕を免れようとしてした殺人を例外とした