Do The Strand

Words & Music by Bryan Ferry.
(1973年発表)



(原題直訳 「ストランドを踊ろう」)*1




From The Roxy Music album, "For Your Pleasure". *2
名作アルバム度 ☆☆☆

「フォー・ユア・プレジャー」 (ロキシー・ミュージック




歌詞は、次のURLから
http://www.lyrics.net.ua/song/41300

名曲度 ☆



邦題 「ドゥ・ザ・ストランド」 (ロキシー・ミュージック






There's a new sensation
新しいセンセーションが起こっている
A fabulous creation
すばらしい創造だ
A danceable solution
To teenage revolution
10代の革命における
踊れる解決策だ
Do the Strand love
さあ、ストランドをしよう
When you feel love
愛を感じたときには。
It's the new way
これは新しいやり方だ
That's why we say
だから、
おれたちは言うのさ
Do the Strand
ストランドしようとな




Do it on the tables
テーブルの上だってかまわない
Quaglino's place or Mabel's
クァグリーノの店でもメーベルの店でも
Slow and gentle
ゆるやかに優しく
Sentimental
センチメンタルに
All styles served here
どんなスタイルでもここならへっちゃら
Louis Seize he prefer
ルイ16世風を選んだ人
Laissez-faire Le Strand
ストランドのレッセフェール*3
Tired of the tango
タンゴには飽きてきた
Fed up with fandango
ファンダンゴにはウンザリした
Dance on moonbeams
月の光の上で踊ろう
Slide on rainbows
虹の上を滑っていこう
In furs or blue jeans
毛皮を着てようが
ブルージーンだろうが
You know what I mean
おれの言ってることはわかるよな
Do the Strand
ストランドをしよう



Had your fill of Quadrilles
クァドリール*4には満足したかい
The Madison and cheap thrills
マディソン*5とかそういうチンケな興奮にも
Bored with the Beguine
ビギン*6なんて退屈だし
The Samba isn't your scene
サンバなんかじゃ、きみたち世界が違うよな
They're playing our tune
あいつら、おれたちの曲をかけてるぜ
By the pale moon
青白い月のそばで
We're incognito
おれたちはお忍びで
Down the Lido
リド*7に行くんだ
And we like the Strand
おれたちはストランドが気に入ってる




Arabs at oasis
オアシスのアラブ人も
Eskimos and Chinese
エスキモーに中国人も。
If you feel blue
ブルーな気分になったら
Look through Who's Who
人名事典を見るといい
See La Goulue
ラグゥルー*8を見てごらん
And Nijinsky
そしてニジンスキー*9
Do the Strandsky
ストランドスキー*10をしよう
Weary of the Waltz
ワルツがけだるくなったら
And mashed potato schmaltz
そしてマッシュポテト*11の臭さもだ
Rhododendron
ロードデンドロン*12
Is a nice flower
すてきな花だ
Evergreen
いつも鮮やかな緑をつけて
It lasts forever
それが永遠につづく
But it can't beat Strand power
だけど、それもストランドの威力にはかなわない
The Sphynx and Mona Lisa
スフィンクスモナリザ
Lolita and Guernica
ロリータとゲルニカ
Did the Strand
ストランドを踊ってたんだ。





Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞





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ポップ・ミュージックとダンスは古くから切り離せないものだ。
いや、このテーゼの立て方は正しいとは言いがたい。
そもそも音楽とダンスが切り離せないものだから、それはあたりまえのことである。
地域のフォーク・ミュージックとフォーク・ダンスとか、民族の民族音楽と民族舞踊を考えれば、それはなおのことだろう。
そしてレコード盤やラジオ放送、さらにはTV放送といったメディアの出現以降は、それは時=空の一致や、「場」における固有の必然性から解放され、各地のダンス・ホール(やボール・ルームやディスコテークやディスコやクラブなど)・・・をひとつの「シーン」として「流行」のダンスが踊られることになる。
(最近では「ランバダ」なんてのがありましたネ)


ことに20世紀に入ってからは、ひっきりなしに新しいリズムや新しいダンスが紹介され(商=介され?)、次々と消えていった。(いわゆる「流行のダンス」fad dances そして、その多くには固有のヒット曲が附随していた。
当初はジャズが、そしてやがてロックンロールが、さらにその影響を通過したポップスが、それらのニュー・ステップを仲介した。
ツイストのように大流行したものもあれば、まるで鳴かず飛ばずのものもあったろう。



例えば、1952年にフィラデルフィアで放送がはじまった「アメリカン・バンドスタンド」というローカル番組は、ロックンロールがブームになった1956年にディック・クラークを番組のホスト役に迎えて、翌1957年以降はABCを通じて毎週土曜日の午後に全米に向けて放送されるようになった歴史的な長寿人気番組だったが、この番組では、ほとんど毎週のように新しいダンスのステップを紹介し、全米の若い視聴者たちは、番組を通じて、いま何が流行っているのか、そしてこれから何が流行るのかを知らされるかたちの構成になっていた。
それらのニュー・ステップは(総じて)地元フィラデルフィアフランチャイズとした(当時で言う)インディペンデント・レーベルの「カメオ=パークウェー」が制作したレコードとともに番組で紹介されるならわしになっていた。大人の世界である。
そうした中でもっとも爆発的な成功を収めたのが、チャビー・チェッカーの「ザ・ツイスト」だろう。
オリジナルはハンク・バラード&ミッドナイターズのものが既に発売されていたが、チャビーがこの「ツイスト」を「アメリカン・バンドスタンド」のテコ入れでレコーディングしたのは1960年の7月、それが番組の「今週のダンス」のコーナーで紹介されるとその週のうちに「ザ・ツイスト」の売上げは20万枚を突破、8月1日付けの「ビルボード」誌のホット100にいきなり49位でチャート・イン、9月19日付でナンバー1になり、その後も5週間にわたってトップ5圏内を上下する大ヒットとなった。
その間、ダンスの「ツイスト」の方は、いっさい相手と体を触れ合わせずに踊るというその革命的ともいえるダンス・スタイルの新しさ、画期性から(単なる一過性の子供の間の流行から)世界的にセンセーショナルなブームとなって広がりを見せ、その(当時の水準からする)あまりのえげつなさのため世界各地で社会問題にまでなったほどだった。たしかにツイスト(トゥイスト)というダンスは、世界を変えたダンスのひとつと言えるだろう。
そしてチャビー・チェッカーも自らが起こした風(というよりも旋風)に乗るように「レッツ・ツイスト・アゲイン」とか「ペパーミント・ツイスト」などのフォローアップのシングルを発表してこれらをヒットさせていった。

このツイスト以降も、「アメリカン・バンドスタンド」は、次々にスロップ、ワァ・ワツーシ、ブリストル・ストンプ、マッシュポテト、ハーディ・ガーディー、フライ、ポニー、ハックルバックなど(それこそ)枚挙にいとまがないほどのダンスを世に送り出していった・・・・・。


(あ、ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」なんてソウルの名曲もあったなぁ♪)
  Land of 1000 Dances.
http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20051107


で、この曲「ドゥー・ザ・ストランド」だが、
この歌は、ロキシー・ミュージックが作り出した架空の(!)流行のダンスだ。
実際にそんな踊りはないし、作ろうともしないところが、すでにしてロキシー・ミュージックであり、ブライアン・フェリーのクレバーでスマートなところだ。

そして、この「Strand」、語の本来の意味としては「座礁する」というのだから、これもかなりロキシー・ミュージック的なお洒落な頽廃趣味である。


座礁しよう、暗礁に乗り上げちゃおう」、テーブルの上で踊ろう、とそこまでは歌ってないんだろうが、「ドゥー・ザ・ストランド」とは(つまるところ)そういうことだろう。


座礁」というメタファーは、(「若さ」ということを頭に置くと)なかなか深い意味合い、もしくは味わいがある言葉だなあ。

勢いあまって・・・って感じじゃないとなあ、ロックになんないもんなあ。
世界が「暗礁」に見えるぐらいにならないとなぁ・・・・。
いまの日本、(小泉の名前はなくてもいいが)「構造改革」が達成されるとどんどん大いなる海洋になるから、よっぽどのヤツじゃないと、それを「暗礁」とは呼べないし、逆に波にさらわれてしまいそうなのが現状かも。ぼく、難しいことはよくわかんないですけども・・・・(笑い)。


歌の中に出てくる「ダンサブル・ソリューション」というのがカッコイイ、(わたしには)かなり「来る」フレーズだ。
「踊れる解決策」、うん、せいぜい心しておくとしよう。
これはとても大事なことだ。 danceable or not


この曲が冒頭に入っている「フォー・ユア・プレジャー」というアルバムは、ブライアン・イーノが在籍していた時代の最後のアルバムで、イーノが一生懸命、世の中にありえない音を作り出しているのがさすがである。しかし、ブライアン・フェリーはもうそんな音は必要としなくなっていた。もともとグラム期にデビューしなければなからなかった彼らにおけるヴィジュアルなインパクトが実際のところイーノに求められていた役割(ロール)だったのだ。
It's Block and Role...とか。

そういえば、ロキシーの(このアルバムにつづく)第3作のアルバム・タイトルが「Stranded」というのだった。乗り上げたわけだな(!?)。


踊りてえ!

*1:「ストランド」は架空のダンス・ファド、詳細は本文解説参照くだされ。

*2:このアルバムからは、ほかにも「In Every Dream Home a Heartache」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20050419 と「The Bogus Man」http://d.hatena.ne.jp/komasafarina/20070812 もここで紹介していますので、よろしければどうぞ♪

*3:経済理論の「自由放任主義」、いわゆる「自由競争」のことだが、まあ、直前の「ル16世風」Louis Seize にかけた語呂合わせ

*4:18世紀中葉のフランスで生まれたダンス・ミュージック。2組か4組の踊り手が四角になって踊る

*5:1960年にアメリカで流行したダンス。横一列になって大勢で踊る、M-A-D-I-S-O-N のそれぞれの文字に固有のステップがあってリーダーの掛け声に合わせてそのステップで踊る、バカみたいですネ。レイ・ブライアント・コンボによる「イッツ・マディソン・タイム」というヒット曲がある

*6:ボレロ調のラテン・アメリカのダンス。コール・ポーター作の「ビギン・ザ・ビギン」というスタンダード曲がある

*7:イタリアのヴェニスに近い保養地、ヨーロッパの上流の人々が集まることからその種の海浜の保養地の総称となる

*8:不明、残念! わしの人名事典にはノー・エントリー。スペル間違いか? まさかドゴール de Gaulle では?

*9:ロシア出身の伝説的な天才舞踏家

*10:ただの語呂合わせだろうが、ロシアの作曲家ストラビンスキーを連想させる

*11:1962年5月頃にアメリカなどで流行したダンス・ファド。ディーディー・シャープの「マッシュポテト・タイム」がヒット

*12:ツツジシャクナゲ属、花はドッ派手なピンクや赤紫や白、常緑のものや落葉のもの、低木や高木もある