Love Minus Zero / No Limit


Words & Music by Bob Dylan.
(1965年発表)



From Bob Dylan album, "Bring It All Bacl Home".
名作アルバム度 ☆☆☆☆☆


「ブリング・イット・オール・バック・ホーム」 (ボブ・ディラン




歌詞は、次のURLから
http://www.bobdylan.com/songs/zero.html



名曲度 ☆☆☆



邦題 「ラヴ・マイナス・ゼロ / ノー・リミット」 (ボブ・ディラン





My love she speaks like silence,
ぼくの恋人、彼女の口調は静寂のよう
Without ideals or violence,
理想も激しさもなしに語る
She doesn't have to say she's faithful,
彼女には自分が誠実だなどと言う必要もない
Yet she's true, like ice, like fire.
それでも彼女は誠心誠意
まるで氷のように、炎のように
People carry roses,
人々は薔薇の花を届け
Make promises by the hours,
一時間ごとに誓いを立てる
My love she laughs like the flowers,
ぼくの恋人、彼女は花のように笑う
Valentines can't buy her.
どんな褒め言葉も彼女をおとせない




In the dime stores and bus stations,
雑貨屋やバス停で
People talk of situations,
人々は時代について語り合い
Read books, repeat quotations,
本を読んでは引用を繰り返し
Draw conclusions on the wall.
壁に結論を書きつける
Some speak of the future,
将来を語る者もいる
My love she speaks softly,
ぼくの恋人、彼女の語り口はものやさしい
She knows there's no success like failure
彼女にはわかっている 失敗ほどの成功はないのだと
And that failure's no success at all.
そして、失敗はまるで成功などではないことを




The cloak and dagger dangles,
外套と短剣がぶらさがり
Madams light the candles.
ご婦人方がキャンドルに火を灯す
In ceremonies of the horsemen,
騎手たちのセレモニーでは
Even the pawn must hold a grudge.
一介のチェスの駒でさえ恨みを抱いている
Statues made of match sticks,
マッチ棒でできた像が
Crumble into one another,
バラバラに崩れ落ちる
My love winks, she does not bother,
ぼくの恋人はウィンクする、彼女は気に病まない
She knows too much to argue or to judge.
彼女は、
言い合ったり、裁いたりするのには
あまりにもものがわかりすぎている




The bridge at midnight trembles,
深夜の架け橋が震えている
The country doctor rambles,
田舎医者はそぞろ歩き
Bankers' nieces seek perfection,
銀行家どもの姪たちは、完璧さを求め
Expecting all the gifts that wise men bring.
賢い男たちからの贈り物を期待する
The wind howls like a hammer,
風はハンマーのように唸りをたて
The night blows cold and rainy,
夜は寒さと雨を吹きつける
My love she's like some raven
ぼくの恋人、彼女はまるでカラスのよう
At my window with a broken wing.
ぼくの窓辺で折れた翼で





Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞





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難解な歌、意味はわからない、
いや、意味があるわけではない
でも、意味はある
つまり、たったひとつの正解というそういう意味があるのではない
書くとは、創るとは、そういうことだ
作り手にとってすら、たったひとつの意味はない
できてしまえば、作り手の手を離れ、
(その「作り」だけが)
ひとり歩きをするのが作品
手品のように千篇変化
見るたび、触れるたびに
見る人、触れる人ごとに



・・・それにしても、
ディランの天才が光るのは、次のフレーズ



There's no success like failure
And that failure's no success at all.

失敗ほどの成功はなく
しかも、その失敗は、まるで成功なんかじゃない




恥ずかしながら、これをぼくが初めて見た13歳のとき、
(当時のぼくはシュールレアリズムとか、とにかく意味不明なものにひたすら浸かっていた。ボブ・ディランもそんなふうにしてぼくの暮らしに紹介されたわけだけど)
このフレーズの意味がさっぱりわからず、ただのわけもない難解フレーズなのだと思っていた。
そして、生きるうちにじわじわとこの言葉の深い意味、そして実に実用的な意味がわかってきた。
そう、失敗は成功なのだと。なぜなら失敗してみないとわからないことがたくさんある。失敗するごとに世界は、人生は広がる。そして、ここまでなら、まあ、誰でもがおそらく言えるようなことでしかない。
ディラン(この歌を書いたのは24歳のとき)の凄いところは、「(だけど)失敗は全然成功などではない」のだと裏を返すところなのだ。ぼくはこれまでに何度もこころの中でこのフレーズをリフレインしてきている。


失敗はだれにでもできるけど、
成功はだれでもができることではない。


(いや、もしかしたら、失敗さえしなければ、それは成功なのかもしれない)
(そして、これは、もはやわたしには無縁の生き方となっている)


(スポーツなどにもある、「負けないように」試合を進める選手やチーム、「勝つ」ために闘う選手やチーム、見ていて楽しいのは、断然、後者のダイナミズムとそのスペクタクルだ。)




歌のタイトル、LOVE MINUS ZERO/NO LIMIT

数式化すると love - 0 = ∞