Woman Is The Nigger Of The World


Words & Music by John Lennon and Yoko Ono.
(1972年発表)




(原題直訳 「女は世界の黒ん坊だ」)




Performed by John Lennon and Yoko Ono.

You can listen to John Lennon The Plastic Ono Band album,
"Some Time In New York City"
名作アルバム度 ☆☆☆


「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」 (ジョン・レノン



歌詞は次のURLから
http://www.bagism.com/lyrics/some-time-nyc-lyrics.html#WomanistheNiggeroftheWorld




名曲度 ☆☆☆☆




邦題 「女は世界の奴隷か!」 (ジョン・レノン







Woman is the nigger of the world
女は世界の黒ン坊だ
Yes, she is
そう、そのとおりだ
Think about it
このことについて考えてみよう
Woman is the nigger of the world
女は世界の黒ン坊なんだ
Think about it
これについて考えてみよう
Do something about it
何かしてみようじゃないか




We make her paint her face and dance
ぼくらは女たちに顔を塗りたくらせて、そして踊らせる
If she won't be a slave, we say that she don't love us
もし奴隷になる気のない女がいたら、あれは男嫌いの女だぜ
と言い立てる
If she's real, we say she's trying to be a man
その女が本気なら、あの女、男になろうとしてやがるぜと言う
While putting her down we pretend that she's above us
女をけなしながらも、その一方でちゃんと女を崇めるふりはする




Woman is the nigger of the world
女は世界の黒ン坊だ
If you don't believe me, take a look at the one you're with
もし、ぼくの話がわからないなら、テメエの女を見てみりゃいい
Woman is the slave of the slaves
女は奴隷どもの そのまた奴隷なのさ
Ah, yeah, better scream about it
あゝ、まったくだぜ、このことは大きな声で叫んでやるといいだろう
We make her bear and raise our children
おれたちは女に子供を生ませて、子育てをさせる
And then we leave her flat for fat old mother hen
そうすりゃ、あとはほったらかし、年くった小太りの子持メンドリでしかない
We tell her home is the only place she should be
家庭こそ女の居場所だと言い聞かせ
Then we complain that she's too unworldly to be our friend
さらに、女ってもんは世間知らずだからな、仲間にはできねえなァと文句をたれる




Woman is the nigger of the world
女は世界の黒ン坊だ
Yes, she is
そうだ、そのとおりだ
If you don't believe me, take a look at the one you're with
おれの言ってることがわからないっていうのなら、
テメエの女を見てみりゃいい
Woman is the slave of the slaves
女は奴隷どもの そのまた奴隷じゃないか
Yeah, alright, hit hit
あゝ、そうだ、まさにそのとおりだ




We insult her every day on TV
おれたちは毎日、テレビで女をコケにして
And wonder why she has no guts or confidence
どうして女どもには芯がないんだ、自信なさげにしてるんだ
と不思議がる
When she's young, we kill her will to be free
若い女の自由への意欲(おもい)を圧し潰し
While telling her not to be a smart
女は利口になっちゃいかんぜよと宣う一方で
We put her down for being so dumb
女はアホだバカだと貶める




Woman is the nigger of the world
女は世界の黒ン坊だ
Yes, she is
そうだ、そのとおりだ
If you don't believe me, take a look at the one you're with
おれの言ってることがわからないっていうのなら、テメエの女
を見てみりゃいい
Woman is the slave of the slaves
女は奴隷どもの そのまた奴隷なのさ
Yes she is
そう、そうなんだ
if you believe me, you better scream about it
おれの言ってることがわかるんなら、でっかい声で言ってやったらいい




We make her paint her face and dance
おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる
We make her paint her face and dance
おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる
We make her paint her face and dance
おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる
We make her paint her face and dance
おれたちは女に顔を塗りたくらせて、踊らせる
We make her paint her face and dance
おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる
We make her paint her face and dance
おれたちは女に顔を塗りたくらせて、踊らせる









Translated into Japanese tonight by komasafarina.訳詞










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きょうはジョン・レノンの命日だった。朝からラジオでジョンの歌声が流れていた。戦争中ということもあって「イマジン」や季節柄もあり「ハッピー・クリスマス(戦争は終わりだ)」が聴こえていたが、この「Woman Is The Nigger Of The World」もビートルズ解散後のジョン・レノンによる画期的なポピュラー・ソングだろう。
「Man」と書いて「人間」と読むような、そんな人類社会の歴史におけるにおける「イデオロギー」としての「女」ということにまっこうからきちんと真摯に取り組んだ世界で初めてのポップ・ソングといって間違いないだろう。


We make her paint her face and dance
We make her paint her face and dance
We make her paint her face and dance

♪おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる
♪おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる
♪おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる



という最後の繰り返しというか、ほとんど連祷のごときもの・・・
これはより忠実に訳すなら、



We make her paint her face and dance
おれたちは女に顔を塗りたくらせて、踊らせる



となって、非西欧文明的な未開の野生の土着部族の習俗を示唆するものとなっている。



We make her paint her face and dance
おれたちは女に顔を塗りたくらせて、踊らせる
おれたちは女に化粧をさせ、踊らせる


ようするにモーニング娘もグラビアアイドルも女子アナも、「化粧をして、踊っている」ことがよくわかる。
結局、たいして変わっていないのである。
ジョンが死んで24年、この歌が発表されて32年。



ビートルズ解散後、夫人のヨーコ・オノと作ったプラスティック・オノ・バンドのクレジットで発表されたジョン・レノンの3枚目のアルバムにあたる「サム・タイム・イン・ニューヨークシティ」は、ジョンとヨーコがアメリカの過激派グループ(白人ニューレフト、ブラックパワー、ネイティヴ・アメリカンをはじめとするエスニック・グループ、フェミニスト・グループ等々)ともっとも緊密な共闘関係(といっても、ふたりはだいたい体よく利用されただけだったが)にあった時期の作品だが、アルバムとしての完成度は、ぼくにはただ雑然とレコーディングした作品を並べただけに思われて、あまり高いと思えないが、そこで扱われている歌の内容は、まるで報道番組を思わせる。手許にないので聴き返したわけではないが、バックをかためるエレファンツメモリーの演奏も相俟って、さながらドキュメンタリー・フィルムを見るようなアルバムになっている。



と講釈が長くなってしまったけれど、、、、
この歌「Woman Is the Nigger Of The World」は、アルバムのトップの曲でシングルで発売されて話題となった。(おかしいのは、日本では原題の断定形を避けて、アハハ、問題提起のつもりだろうか「女は世界の奴隷か!」という控え目な疑問形の邦題で発売されている。おそらく「決めつけるのはよくない」とかいう(どこにでもいるような)バカがいたのだろう。
「nigger」というのは「negro」を意味する侮蔑語、差別語である。当時の西欧社会の女性の従属的あるいは屈従的な立場をアメリカの黒人になぞらえたところがこの歌のひとつのポイントであるわけだが、すでにCivil Rights Movement (公民権運動)や Black Powerルネッサンスによってアメリカ社会における地位の改善は大きく果たされてはいたはずなのだが、それでもまだこの歌の比喩の構造は強い説得力を持っていたのだと思われる。


社会における女性の地位を黒人にたとえることは、ジョン・レノンが十代に聴いたロックンロールから学んだものだろう。
かつて「大人」社会の中で「大人」でも「子供」でもなくなった十代の少年少女「ティーネージャー」が、自分たちの居場所のなさを「白人」社会における「黒人」たちの立場と無意識的、直感的に、潜在的に同一化(アイデンティファイ)して、黒人たちの音楽というメディアを通じて、(一方的ながらも)いかした黒人たち、話のわかるニグロの連中と連帯してしまうかのように彼ら黒人たちの商業的なポピュラーソングである「リズム&ブルース」を発見し、自分たちの音楽として受け入れた。
そして、そうした新しい市場(白人ティーネージャー)に向けて生み出されたダンサブルでノイジーな(つまり、賑やかで陽気に踊れる)音楽としての「ロックンロール」(「ロック」も「ロール」も「揺れる」「揺さぶる」という意味だ)が広く先進諸国の若者たちの間に広まり、支持を得ることで、世界の歴史は大きく動いたのだとぼくは心ひそかに信じている。
そうした「ロックンロール」の申し子として、自ら「第二世代」の「ロックンロール」の先頭に立つことになったビートルズジョン・レノンが、グループ解散後、ソロとしてこの曲を書き、歌っていることに「ロック」という音楽に延々かつ脈々と流れ続ける「何かいいこと」(something good)の「持続」とか「進展」とか「深化」を感じるのだ。
そして、この歌ではかつての「ティーネージャー」と同じように「女性」が「黒人」にアイデンティファイされ、その解放のためのエネルギーというか原動力というか元気というか方法論を(やはり)当時の「リズム&ブルース」に求めるかのようなサウンドとメロディーの曲に仕上がっている。
やっぱり、ジョン・レノンは、こういうブルージーなロックを歌わせると絶品だなあと思う。


そして、この歌の本当の凄さ(あるいは「新しさ」といってもいいかもしれな)は、次の注目すべきフレーズにあると思う。



Woman is the slave of the slaves
女は奴隷どもの そのまた奴隷なのさ



つまり、「男もまた奴隷なのだ」という認識がこの歌の根底にあるということだ。
真面目に黙々と働く男を奴隷呼ばわりするのは、ロッケンローラーの横暴だとするムキもあるかもしれないが、当時の社会にはまだ世界的に「階級闘争」という観点が広く世界中に行き渡っていた。世の権力は神・聖職者から王侯・貴族、王侯・貴族から平民企業家(のちの資本家)、資本家から中間市民層、中間市民層から意識的労働者(プロレタリアートとかいったそうだ)へと移行するのが歴史の必然だとする一種の信仰である。そういうバイアスが全世界にかかっていたので「奴隷」という言葉はすんなりと受け入れられたはずである。



If you don't believe me, take a look at the one you're with
Woman is the slave of the slaves
Yeah,
Think about it

おれの言ってることがわからないっていうのなら、テメエの女を見てみりゃいい
女は奴隷どもの そのまた奴隷なのさ
あゝ、そうだ
そのことをよく考えてみろよ



・・・・こういうふうに、物事を考える「主体」としての「自分」すらも、また(その「考える対象」として)「客体」化されてしまう。
「主体」として「見たり」「考えたり」する特権的な安全な立場は、ことごとく思考によって(さらに試行によって)更新され、その特別な場がありえないものとされていく。
そういう20世紀的な思考のパターンがこの歌のこの一節には如実に現れていて、そのあたり、たいへん貴重なものだと思う。